1−7 調査結果の概要

濃尾平野の南部を東西に横断する約32kmの測線上(名古屋市昭和区から岐阜県多度町に至る区間)で、大型バイブレータ震源によるP波反射法地震探査および測線上の5箇所を発振点とする屈折法地震探査を実施した。これらの解析を行なった結果、以下のことが明らかとなった。

<P波反射法地震探査>

1) バイブレータを震源とする反射法地震探査により、先新第三系基盤にいたるまでのP波反射断面図とP波速度構造図が得られた。基盤岩上位の堆積層は、平成11年度反射法断面と同様に、西方に向かうにつれて、次第にその層厚を増すとともに西ほど深く沈降している様子が明瞭に捉えられた。さらに、測線東部においては、東海層群上部〜海部累層にかけての地層は削剥を受けている可能性が高い。

2) これらの地層境界面は揖斐川西方で消滅し、地表位置で多度町北小山付近に存在する養老断層に対応した事象と考えられる。ただし、反射記録から推定される養老断層の主断層の地表位置は、北小山東方約1km地点となり、北小山は養老断層の副次断層と考えられる東傾斜の断層の地表位置に対応する。この副次断層の西側には東海層群下部層が東に急傾斜で存在している。

3) 先新第三系基盤上面は比較的凸凹に富み、西方に傾斜している。その深度は、測線東端で約北端で深度約500mであり、佐屋町付近以西でその傾斜を大きくし、揖斐川西岸付近で約2300mに達する。測線西端部では、深度50m付近の反射面が基盤上面に対応していると考えられ、養老断層の落差は2200m程度に達しているものと考えられる。

4) 黄金駅から庄内川付近において、基盤上面は最大比高約400m程度の滑らかな凹状を示している。これは、ブーゲー異常のローカルな低重力異常域と比較的良く対応している。この凹地は平成12年度測線の南端部で確認された凹地に対応し、北東―南西トレンドを持ち、南西方向に広く、浅く連続している。中村区付近に認められるブーゲー異常の急傾斜部は、この凹地の影響を受けているためであり、基盤の大規模断層等によるものではないと考えられる。

5) 笠寺付近で推定されている地形面の傾動または変換線の北方延長部に相当する久屋大通り西側付近では、基盤上面の変化がやや大きく、さらに、その上部の反射記録の連続性もやや悪いものの、浅部の堆積層は比較的連続しており、活断層の存在を明瞭に示すような大きな構造変化(累積性を持つ大きな上下変位)はないと考えられる。また、今回実施した反射法の分解能の範囲内では、養老断層を除いて、その東側には別の活断層の存在を明瞭に示すような大きな構造変化は認められない。

6) 速度解析の結果、基盤以浅の堆積層のP波速度は深度とともに約1.5km/sec〜3.6km/secまで漸増し、東部では1.5km/sec〜3.2km/secを、西部では1.5km/s〜3.6km/sを示している。測線西部地域での基盤直上の堆積層の速度は東部地域に比べて速い傾向が認められる。

<P波屈折法地震探査>

1) バイブレータ4台を震源とする夜間の屈折法発振により、測線東端部の市街地部分を除くほぼ全域で基盤の屈折波が確認された。屈折波の最大到達距離は約21kmである。ただし、庄内川から千種通り付近までは市街地部分にあたるため中央部での発振に対する屈折初動の検出はできなかった。

2) 屈折法の解析により基盤岩のP波速度は5.5km/sと推定された。レイトレーシングで求まった堆積層中の各層の速度は、反射法による速度と大略一致している。堆積層中の下部層の速度が西方で速くなる傾向も一致した。