3−4 堆積層中のVpおよびVsの関係

濃尾平野に於いては、以下の三本の坑井に於いて基盤までのVpおよびVs構造が得られている

表3−4−1

これら3本の坑井で行われたVSPによるVpおよびVsの関係を調べた。図3−2−19−1は上記3本の井戸で得られたVpとVsをクロスプロットした結果である。VpとVsの関係は、Vsが約300m/s以上においては

Vs=0.745*Vp−873             (3.4.1)

の線型関係式で近似できる。この関係式が、濃尾平野内で普遍的に適用することが確認出来ればP波反射法と組み合わせることで、S波速度構造を得ることが可能となる。図図3−2−19−2図3−2−19−1のVpが3000m/sec以下およびVsが1500m/sec以下の部分を拡大した結果である。これから、VSPから得られたVsは3.4.1式を用いてVpから計算されるVsに対して±100m/sec程度のばらつきを有していることが判る。図中にはこのばらつきを推定範囲として示した。図3−2−19−3には、S波反射法測線で得られたVpとVsをクロスプロットした。S波反射法から得られるVsは上記の推定範囲の中に収まっているのが判る。以上の結果、これまでに得られているデータから判断すれば、堆積層中のVsはVpと3.4.1式を用いて推定できることが明らかになった。ただし、以下の条件が必要である:

Vsが300m/sec以上であること。

定されたVsは±100m/sec程度の推定誤差が含まれる。

図3−2−20−1図3−2−20−2には、P波反射法測線で得られたP波速度と3.4.1式を用いて推定したS波速度を示した。S波速度については、その推定範囲を示した。基盤のP波速度については、屈折法の結果(5.5km/sec)を、S波速度については清洲観測井における結果(3.2km/sec)を用いた。Vsが300m/secに満たない浅層部については、名古屋市内のPS検層のデータを用いて、VpとVsの関係がまとめてある(飯田・正木,1978)。これによれば、VpとVsに一律の線型関係は見いだせないが、土質区分によって分類すると、沖積層(熱田層、海部・弥富累層)においては、VsとVs/Vpの間に線型関係が見出されている。一方、洪積層における両者の線型関係は明瞭ではない。高分解能のS波探査などによって浅層部のS波速度が得られれば、この関係を用いて、Vs/VpからP波速度が推定できる。ただし、地質区分および層序区分などが必要となるため、浅層ボーリングなどによる情報が不可欠となる。 図3−2−20−1図3−2−20−2においては、名古屋市内でのデータの結果からVp=1500m/secの場合Vs=300m/secとした。