(2)反射法結果との比較

微動アレイから得られたS波速度構造をP波反射法記録やこれと坑井でのP波、S波の関係式により求めたS波速度との比較を行った。図3−2−16−1図3−2−16−2には反射記録との比較を、図3−2−17−1図3−2−17−2図3−2−18−1図3−2−18−2には微動観測点での微動によるS波速度構造と反射法による速度構造の比較を示した。この比較の結果を以下に要約する。

・微動による速度構造は概ね4層構造を示し、S波速度は地表から、第1層:約0.5km/s以下、第2層:約0.5〜0.7km/s、第3層:約0.9〜1.2km/s、最下層:約3km/sと大別され、第3層と最下層の間に層厚数百メートルの約1.5km/s層が一部地域に認められる。反射記録と比較すれば、微動結果の最下層は基盤に対応しているものと考えられ、この上面深度も反射法結果に比較的良く一致している。また、第2層と3層の境界は反射法のC層付近(弥富累層〜東海層群)に大略対応している。このように大略的には反射法と矛盾の無い結果が得られている。

・微動結果と反射法結果を細かく比較すれば、全体に、微動の第3層(東海層群相当)の速度が反射法結果に比べて若干速い傾向を示している。また、第3層はNP2等では1.2km/sにも達しており、東海層群としては少し速過ぎるとも考えられる(ただし、羽島観測井では東海層群中で1.2km/sの速度が得られている)。

・濃尾平野においては、坑井での検層やVSP等の直接測定により確認されている東海層群以深の速度データは極めて少ないのが現状であり(清洲、山王、羽島の3坑井のみ)、さらに、深度1000m以上の東海層群や中新統の速度については坑井で直接確認されたものは皆無である。このため、比較的深部の速度構造の評価については不確定さが残っている。

・微動の解析が観測地点毎に実施されているため、微動結果単独での地点間の層の安定した対応づけは容易ではない。例えば、図3−2−16−1図3−2−16−2の上図での微動結果の各層の対応付けは反射法結果を参考にしながら行っている。また、最終速度モデルを決定する場合、観測点毎での位相速度曲線へのフィッティングのみで決定するのは危険であり、反射法結果や隣り合う微動結果を参照しながら行なう必要もある。2.5章の「層数についての検討」の項でも触れたように、各地点の微動結果から広域の速度モデルを作成する際には反射法結果等の他のデータを参考にしながら層数、層厚、速度等を絞り込むことにより、解の収束が向上し、さらに地点間での層の対応付けも比較的容易になってくる。