(2)平成11年度S波測線

図3−2−9には平成11年度S波測線における、速度解析結果を示した。観測井における直接的な地層対比の結果この地点での基盤深度は660mとされ、VSP記録による基盤上面からの反射波の走時は往復走時で2100msec前後になる。既に報告された平成11年度S波測線における基盤深度は、往復走時で2400msecと解釈されており、実際の基盤より深い部分が推定された。この事実を元に、平成11年度S波測線におけるS波およびP波速度再解析を行った。図3−2−9(a)および(b)に示した速度解析パネル中に○印で示したものが、既に報告された速度関数で、+および●印で示したもが、再解析の結果である。図3−2−10にはVSPによって得られた速度関数、既に報告された速度関数、新たに読みとった速度関数を示した。以下に新たに得られた速度を示した。

表3−2−3−2

以上のように、平成11年度S波測線で得られたS波速度構造は、VSPで得られた速度に対し、25%程度の誤差を含んでいた。一方、P波速度の推定誤差は10%以内である。このように、基盤深度が浅くても、都市部などで十分なS/Nが得られない場合は、S波の推定精度が低下することが考えられる。S波速度の推定精度を向上させるためには、S波反射法を単独で行うのではなく、P波反射法と併せて行い、S/Nの高いS波およびP波記録を取得し、S波とP波の反射面を対比させながらS波速度を推定することが重要である。図3−2−11には、(a)柱状図、(b)S波測線におけるS波深度断面、(c)S波測線におけるP波深度断面および(d)P波測線におけるP波深度断面図を示した。3.2.1で示した層区分は、速度境界を基にしているため地層境界とは必ずしも一致しないが、概ね一致している。基盤深度の推定については、清洲観測井において661mと確認されている。P波反射法を用いた場合、反射法による基盤の推定誤差は約5%ときわめて高精度であった。