(1)テフラ分析

掘削基準面より深度38.00mの試料は、粘土・シルト分以下がほとんどの灰褐色を呈する泥質堆積物で、砂分は極わずか含まれる。得られた砂分の砂粒鉱物組成をもとめたところ、軽鉱物粒>風化粒>火山ガラスの構成で、他に重鉱物・不透明鉱物が極わずか検出された(表5−2−1)。軽鉱物は長石類が多く、変質もしている。ガラスは、細粒で球状に発泡したCa〜Ta型が多く、一部のものは淡褐色を呈する。また、極少量であるが中粒砂サイズのチューブ状に発泡したCb型ガラスも含まれている。屈折率を測定した結果、細粒のCa〜Ta型ガラスは1.510および1.520前後の非常に高い屈折率を示す。Cb型は3片について測定でき1.502−1.506の値を示した。重鉱物は黒雲母と角閃石がわずかに認められた。

清洲町地域の地下38.00m付近には、既往資料によると熱田層が分布しているとされ、更に熱田層上部には木曾御岳火山由来の軽石(Pm−1、Pm−3)を密集する層準があるとされる(坂本ほか,1984;東海三県地盤調査会,1985)。Pm−1のガラス屈折率は1.501−1.503を示し、重鉱物組成は角閃石、黒雲母に斜方輝石を伴う。Pm−3はガラス屈折率が1.505前後を示し、重鉱物は両輝石と角閃石によって特徴づけられる(木村ほか,1991;町田・新井,1992)。

今回分析した試料は、泥質で僅かに得られた砂粒も極細粒である。火山ガラスは少量含まれているが砕屑性の軽鉱物も検出される。層相観察時には火山灰層と判断されたが、火山灰層の純層では無い可能性がある。一方、検出された火山ガラスの多くは、高屈折率で細粒の球状〜多孔質状(Ca〜Ta型)ガラスであるが、このような形態・屈折率の特徴は既往報告にはないものである。分析試料を得た粘土層は、熱田層中に見られる御岳軽石密集層とは異なるものと考えられる。ただし、極微量得られたCb型火山ガラス片は、形態と屈折率が、御岳テフラのPm−1およびPm−3のそれに類似する値を示すこと、粘土試料中に極わずか含まれる重鉱物は、火山灰由来と判断できないものではあるが、Pm−1を特徴づける角閃石と黒雲母が検出していることより、本試料中に木曾御岳由来のガラスが含まれている可能性もある。

深度38.00mの灰褐色粘土層には極微量の砂分が含まれている。その中には極細粒の球状〜多孔質で高い屈折率(屈折率:1.520前後)のガラスが含まれており、また、数片ではあるが中粒砂サイズの多孔質(Tb)の火山ガラス片も検出された。前者の特徴に類似するような火山灰の記載は無く、その由来は不明であるが、後者はガラスの形態と屈折率(1.502−1.505)、および、本層が熱田層と推定されていることにもとづけば、Pm−1に由来する可能性がある。ただし、極めて稀な産状であるため、更に層位的な確認をする必要がある。

表5−2−1 テフラ分析結果表