4−3−1 PS検層(LFDL)

PS検層はLFDL(Low Frequency Dipole Logging)により実施した。LFDLは従来型MONOPOLE音波検層機と低周波DIPOLE音波検層機の異なる2つの測定系より構成される。

MONOPOLE部は発振周波数 15kHzの Piezoelectric 型発振子とこれより11,12,13 及び 14フィート離れたツール上に設置された 4 個の Piezoelectric Ring 受信子により音波の発振、地層内を伝播した音波エネルギーの受信を行う。DIPOLE部は Magnetostrictve 発振子とこれより11,12,13 及び 14 フィート離れた位置に設置された 4 個の Piezoelectric Disk受信子により発振、受信を行う。

MONOPOLE発振子の発振周波数が比較的高い周波数であり、発生する音波エネルギーが発振子(一極発振)を中心に 360°同位相で放射状に広がるのに対し、 DIPOLE発振子は1.5 kHz の低い発振周波数の音波エネルギーを平面よりなる発振子(二極発振)より坑軸(ツール軸)に垂直な2方向に非対称位相に発生し、同様に対面した2平面よりなる受信子により孔軸に垂直な2方向の音波エネルギーを受信測定する。

図4−3−1 MONOPOLE, DIPOLE 発振概略図

MONOPOLE部では従来のフルウエーブ・ソニックと同様に発振された音波エネルギーは地層または抗壁を伝播し受信器に到達する。これらの受信波形を測定することにより地層の各種弾性波速度を算出する。

DIPOLE 発振子より発生したFlexural波は一般に分散を示すが、低周波数域においては分散が小さく、Flexural波の位相速度はShear 波とほぼ等しい速度を示す。このため軟弱地層においてShear波が測定できない場合でも間接的にS波速度を知る事ができる。

測定されたデータは坑内機器内でデジタル信号化され、アーマード・ケーブルにより地上機に伝送される。MONOPOLEでは発振時より約 4000μsecまでの波形を、 DIPOLE では約 16000μsecまでの波形を各レシーバーに収録する。

4受信器(R1, R2, R3, R4)より得られた波形データは R1−R2, R2−R3, R3−R4の3組の対波形に分けられ、各組の対波形における初動波到達部周辺の波形位相を比較することにより弾性波速度を算出する。概略は以下のとおりである。

波形データより初動波到達以前のノイズレベルを測定し、ノイズと伝播波のレベルを比較する事により到達時間(初動時間)を算出する。得られた到達時間を起点とし後方に波形を測定する時間窓を設置する。測定窓内において2つの波形の位相関係を比較する。波形の相似性より対になる波形のうち短いスペーシングの受信器で測定された波形と長いスペーシングの受信器により測定された波形の遅滞関係(時間)を知る事ができる。波形の相似性は数値で表され、相似性の悪いデータについては解析処理に用いないこととする。このようにして得られた3つの走行時間より弾性波速度を求め、解析弾性波速度値とする。算出された走行時間の単位はμ秒/feet、弾性波速度の単位は km/秒とする。

図4−3−2 LFDL仕様及び概略図