(8)沖縄県に被害を及ぼす地震及び地震活動の特徴

沖縄県に被害を及ぼす地震は、主に南西諸島海溝付近などの海域の地震と陸域(一部海域を含む)の浅い地震と沖縄トラフ沿いの浅い地震である。なお、沖縄県とその周辺で発生した主な被害地震は、図9−44のとおりである。

 沖縄島や慶良間諸島では、M4〜5程度の地震は起きているものの、歴史の資料によって知られている被害地震は少なく、沖縄島南東海域に起こった1882年の地震(M不明)と1909年の地震(M6.2)および1926年の沖縄島北西沖の地震(M7.5)がある。1909年の地震では、那覇、首里などの沖縄島南部で1,000ヶ所以上の石垣が崩壊し、十数名の死傷者{51}が生じた。また、1926年の地震は、震源が深い(約130km)と推定され、プレート境界付近の地震と考えられる{52}。いずれの地震にも津波被害の報告はない。なお、奄美大島東方沖に発生した1911年の地震(M8.0)では、那覇市、首里などで被害が生じた。

 沖縄県西部の先島諸島周辺には、M7程度の地震がしばしば発生する。これらは、プレート境界付近に発生した地震で、とりわけ被害が大きかったのは、住民約12,000が溺死し、3,000戸の家屋が流出した{53}1771年の八重山地震津波(M7.4)である(詳細は、9−2(3)参照)。1966年の地震(M7.8)では、与那国島で死者や家屋全壊などの被害が生じた。1947年の西表島西方沖の地震(M7.4)および1958年の石垣島付近の地震(M7.2)では、西表島や石垣島に数名の死傷者{54}が生じた。これらは深さ80〜100kmで発生した深い地震である。1915年の石垣島北方沖の地震(M7.4)なども深い被害地震である。

 沖縄県では、海岸沿いに、概して新しい時代の珊瑚石灰岩や珊瑚礁を伴っている。石灰岩台地には、それを横切った多数の活断層が報告されているが、小規模で非常に多数であるため、地震との因果関係はよく分かっていない(図9−45)。

 石垣島と宮古島において、石垣崩壊、山崩れ、道路破壊などの被害が生じた1898年の石垣島東方沖の地震(M7)は陸域に発生する浅い地震と同じタイプの地震である。このタイプの地震は津波を伴うことはあまりないが、沖縄トラフで発生した浅い地震と考えられる1938年の宮古島北方沖の地震(M6.7)では、地震発生の約10分後、宮古島平良港に高さ約1.5mの津波が押し寄せ{55}桟橋を流失させるなどの被害が生じた。

 西表島近海では、1991年および1992年に活発な群発地震活動が発生している。特に、1992年の9月に始まり、一部に石垣などの崩壊が生じた群発地震(最大M5.0)では、震源域は北西−南東方向に伸びる面上に分布し、地表に断層は現れなかったものの、水準測量では南西側が下がる正断層が推定された{56}。この付近では、1924年に大量の軽石を噴出した海底火山活動があり、火山との関連も注目された活動であった。

 また、外国の地震によっても津波被害を受けることがあり、1960年のチリ地震では、沖縄島などで死者、住家全半壊、船舶流出などの大きな被害が生じた。

 なお、沖縄県とその周辺における小さな地震まで含めた最近の浅い地震活動を図9−46に示す。

表9−8 沖縄県に被害を及ぼした主な地震