(2)陸域の浅い地震

九州地方の陸域は、その地形地質の特徴から北部、中部、南部の3つの地域に大きく分けられる。中部地域は前述の別府−島原地溝帯とその周辺の地域で、具体的には大分県中部、福岡県南部、熊本県中・北部および長崎県島原半島などである。

 北部地域(佐賀県や福岡県、長崎県の中部以北)には、火山がなく活断層も少ない。西山断層帯などの主な活断層は、北西−南東方向から南北方向に延びており、活動度がB〜C級の横ずれ断層または逆断層である。これらの活断層に関連した被害地震は知られていない。歴史の資料によると、北部地域に大きな被害を及ぼした地震は、1700年の壱岐・対馬の地震(M7)と1898年の糸島地震(M6.0)しか知られていない。

 中部地域には、阿蘇山や雲仙岳などの火山や多数の活断層が分布している。中部地域の北縁には、水縄断層帯がほぼ東西に走り、南縁付近には布田川・日奈久断層帯などがある。中部地域の活断層は、ときに右横ずれを伴うほぼ東西方向に走る正断層である。また、別府湾、八代海、千々石湾、甑島付近などの海域にも音波探査によって多数の活断層が見いだされている。地殻変動を見ると、九州地方(陸域)全体で伸びの傾向があり、特に中部地域ではほぼ南北方向の顕著な伸びが認められる(図9−7)。このような活断層の分布や地殻変動などから、九州地方には、中部地域を中心に南北方向に地面が伸びるような力がかかっていると推定される。

 九州地方の陸域の浅い被害地震は中部地域に多く、1600年代以降の約400年間におけるM6程度の被害地震は15例以上も知られている。しかし、地震に対応して明確なずれが認められた活断層は知られていない。1600年代以前には、679年の筑紫国の地震(M6.5〜7.5)、1596年の別府湾の地震(M7.0)など、M7程度と推定される地震が記録されている。なお、679年の地震は最近の活断層調査によって水縄断層で発生したと推定され{7}、また1596年の地震は海底調査によって別府湾内の活断層で発生したと推定されている{8}

 南部地域は、九州山地、宮崎平野、大隅・薩摩両半島などを含み、九州の面積の半分以上を占める。南部地域には、桜島や霧島などの火山は分布するが、活断層は少なく、八代海に近い出水付近の出水断層帯などが主なものである。被害地震としては、1914年の桜島噴火に伴う地震(M7.1)や1968年のえびの地震(M6.1)、1997年3月と5月の鹿児島県北西部の地震(M6.3、M6.2)などがある。

 陸域部分が狭い南西諸島では、海域に震源があっても、島周辺で発生する浅い地震は、陸域の浅い地震と同様のタイプと考えられる。このタイプで被害を伴った地震としては、1909年の沖縄島南部海域の地震(M6.2)、1898年の石垣島東方沖の地震(M7)などがある。なお、トカラ列島の近海では、しばしばM4〜5程度の群発地震が発生する。

なお、南西諸島の北西側(東シナ海側)の海底には、南西諸島に並行するように溝状の地形(沖縄トラフ)が走っており、海底調査の結果、正断層が多い地帯{9}とされている。同じく正断層の多い別府−島原地溝帯は、この沖縄トラフのほぼ北東方向の延長上に位置する。沖縄トラフで発生した1938年の宮古島北方沖の地震(M6.7)では、地震発生の約10分後に波高1.5mの津波が宮古島に押し寄せた{10}

 なお、活断層の活動間隔の多くは1,000年以上なので、そこで発生した地震が知られていなくても、地震が発生しないということを示しているわけではない。