(6)東京都に被害を及ぼす地震及び地震活動の特徴(伊豆諸島及び小笠原諸島を除く)

東京都に被害を及ぼす地震は、主に相模湾から房総半島南東沖にかけてのプレート境界付近で発生する地震と、陸域の様々な深さで発生する地震である。なお、東京都とその周辺で発生した主な被害地震は、図5−49のとおりである。

 相模湾から房総半島南東沖にかけてのプレート境界付近で発生する地震としては、例えば、1923年の関東地震(M7.9)では、都内のほとんどで震度5〜6の揺れとなり、大火災が発生したことも災いして、当時の東京府内では、死者・行方不明者107,519名などの非常に大きな被害が生じた{64}。また、1703年の元禄地震(M7.9〜8.2)でも当時の江戸は大きな被害を受け、火災も発生した。

 東京都の地形を見ると、都東部には関東平野が広がり、その西側の丘陵地を経て、都西部は関東山地の一部となっている。都内の主要な活断層としては、多摩地区に活動度B級の活断層である立川断層帯が北西−南東方向に延びている。活断層調査の結果、立川断層帯の南端部では、西暦約1100年以降に活動したと見なされている{65}。また、立川断層帯の北部では、約1800年前に活動があったことが推定されている{66}平均活動間隔は5,000年程度{67}と推定されているが、過去の活動についての詳細な調査はまだ行われていない。また、比較的新しい地質時代(約2千数百万年前以降)の堆積物が厚く堆積している関東平野の下では、周囲の山地などから続く比較的古い時代の岩盤が大きな谷のような形をしており、この地下の谷は関東山地と足尾山地の間を通って北西−南東方向に延びている。埼玉県や千葉県では、この地下の谷の延長部分に活断層が推定されている。都内の関東平野の地下にも、まだ未発見の活断層が存在する可能性があるが、地形の変形の度合いからは、A級の活動度を持つような活断層が存在する可能性は低い{68}図5−50は、東京都の地形と主要な活断層を示したものである。なお、東京湾北部にある東京湾北部断層は、最近数十万年間活動していないと考えられるので、図示していない{69}

 陸域で発生した被害地震としては、荒川河口付近で発生した1855年の(安政)江戸地震(M6.9)が知られている。この地震は、浅い地震であったか、関東地方の下に沈み込んだフィリピン海プレートに関係したやや深い地震であったか、はっきりしていない{70}。この地震により、下町を中心に全体として死者約10,000名{71}などの大きな被害が生じた。また、沈み込んだ太平洋プレートに関係する陸域の深い地震としては、(明治)東京地震と呼ばれる1894年の地震(M7.0)が知られている。この地震では、東京湾岸を中心に、都内で死者24名などの被害が生じた{72}。最近では、約100kmの深さを震源とする1988年の東京都東部の地震(M6.0)で若干の被害が生じたことがある。さらに、歴史の資料によると、17世紀前半などに、江戸付近で発生したM6〜7程度のいくつかの地震により、被害が生じたことが知られているが、これらの地震が発生した深さは分かっていない。

また、1992年の東京湾南部(浦賀水道付近)の地震(M5.9、深さ92km)など周辺地域で発生する地震や東海沖などの太平洋側沖合で発生するプレート境界付近の地震によっても被害を受けることがある。

 なお、東京都とその周辺における小さな地震まで含めた最近の浅い地震活動を図5−51に示す。また、東京都に被害を及ぼした主な地震の表は5−3(7)参照。