(6)福島県に被害を及ぼす地震及び地震活動の特徴

福島県に被害を及ぼす地震は、主に太平洋側沖合で発生する地震、陸域の浅い地震である。なお、福島県とその周辺で発生した主な被害地震は、図4−54のとおりである。

 福島県の太平洋側沖合では、県内全域に被害を及ぼした1938年の福島県東方沖地震(M7.5)や1987年に福島県沖で続けていくつか発生した地震(最大M6.7、M6程度の地震は5回)などが知られているが、M8を越えるような巨大地震の発生は知られていない。1938年の福島県東方沖地震は塩屋崎の東方で発生し、県内の広い範囲で震度5が観測された。小名浜の検潮所では107cmの津波が観測された{64}が、津波による被害はなかった。地震動により家屋、道路、鉄道などの被害を含め、県内で死者1名{65}などの被害が生じた。この地震の余震活動は非常に活発であり、M7程度の余震だけでも約2ヶ月間に6回発生した。本震の次の日にはM7.4の最大余震が発生した。この海域では、巨大地震がないかわりに比較的大きめの地震(M7程度)が続発する傾向があるようである。

 福島県の地形を見ると、県東部の阿武隈高地、県中部を南北に延びる奥羽山脈を境に浜通り、中通り、会津地方に分かれている。県内の主要な活断層は、これらの地方にある盆地などの低地と山地との境目に分布している。阿武隈高地には古い岩石などが広く分布し、比較的安定した地質となっており、沿岸部の双葉断層を除けば、活断層は少ない。中通りには、阿武隈川が流れる低地の西側と奥羽山脈との境目に福島盆地西縁断層帯があり、会津地方には、会津盆地の西側に会津盆地西縁断層帯がある。いずれも活動度B級の逆断層で、双葉断層は左横ずれ成分も持っている。この中で双葉断層は、地形から推定される断層の長さは長いが、活断層調査などによると、最近数万年間に活動的である区間は北部の18km程度と考えられており、そこでは約3700年前以降に最新活動があったと推定されている{66}図4−55は、福島県の地形と主要な活断層を示したものである。

 陸域で発生した被害地震としては、1611年の会津の地震(M6.9)、1659年の田島付近の地震(M6 3/4〜7)、1731年の桑折付近の地震(M6.5)、1943年の田島地震(M6.2)などが知られている。

 1731年の桑折付近の地震(M6.5)は福島盆地西縁断層帯付近で発生したが、この断層帯の活動との関係は分かっていない。また、もしこの断層帯で発生した地震だとしても、地震の規模の大きさからは、断層帯全体を震源域としたとは考えにくい。

 1611年の会津の地震(M6.9)は会津盆地西縁断層帯で発生したと考えられている{67}。活断層調査によると、この断層帯では過去にも繰り返し地震が発生してきたことが分かっており、その活動間隔は1700年程度と推定されている{68}。また、田島付近で発生した1659年や1943年の地震に対応した活断層は知られていない。

 県西部のところどころでは、群発地震が発生することがある。例えば、1936年に会津若松市付近で最大M4.1、1966年に吾妻山浄土平付近で最大M4.1、1978年に金山町付近で最大M4.3、1985年に下郷町付近で最大M4.2の群発地震が発生した。特に、田島町、下郷町周辺などでは活発な群発地震活動が時々発生している。県内で知られている群発地震の規模はほとんどがM4程度以下であり、継続期間は半年以下の場合が多い。また、田島町付近では、1943年の田島地震(M6.2)のようにM6程度の本震−余震型の地震が発生したことがある。

 また、周辺地域で発生する地震や三陸沖から関東地方にかけての太平洋側沖合で発生する地震によっても被害を受けることがある。さらに、1960年のチリ地震津波のような外国の地震によっても津波被害を受けることがある。

 なお、福島県とその周辺における小さな地震まで含めた最近の浅い地震活動を図4−56に示す。

表4−6 福島県に被害を及ぼした主な地震