(1)太平洋側沖合などのプレート境界付近で発生する地震

太平洋プレートは、東北地方の太平洋側沖合にある日本海溝から、東北地方の下に沈み込んでいる(図4−3)。

 太平洋側沖合などのプレート境界付近で発生する地震は、沈み込む太平洋プレートと陸側のプレートがその境界でずれ動くことにより発生するプレート間地震と、沈み込む太平洋プレートの内部で発生する地震に分けられる。これまで知られている被害地震のほとんどはプレート間地震である。

1)太平洋プレートの沈み込みによるプレート間地震

 被害地震としては、1896年の明治三陸地震(M8 1/2)をはじめ、1968年の十勝沖地震(M7.9)、1978年の宮城県沖地震(M7.4)、1994年の三陸はるか沖地震(M7.5)など、数多くの地震が知られている。これらの多くは海底下の比較的浅いところで発生し、その断層運動による海底での地殻変動(隆起や沈降)で、ほとんどの場合、津波を伴う。津波の高さは水深が浅くなるに従って大きくなる性質があるため、一般に沿岸部では波が高くなる。また、津波の高さは湾の形状などによっても変化する。このタイプの地震が比較的陸に近いところで発生した場合は、太平洋プレートが陸地に向かって傾き下がっているため、震源の深さが少し深くなる。そのため、津波の高さはあまり大きくならないことが多いが、震源域が陸地に近いために、宮城県沖地震や三陸はるか沖地震のように地震動により陸上で大きな被害が発生することがある。

 東北地方の太平洋側沖合は、日本付近で最も地震活動が活発な海域のひとつであるが、場所によって地震の起こり方に特徴がある。例えば、青森県沖から宮城県沖にかけては、1896年の明治三陸地震(M8 1/2)や1968年の十勝沖地震(M7.9)のようにM8程度の巨大地震が発生することがある。しかし、福島県沖では、1938年の福島県東方沖地震(M7.5)のときのようにM7程度の地震が続けていくつか発生したことはあるが、M8程度の地震の発生は知られていない。また、1978年の宮城県沖地震(M7.4)が発生した海域付近では、1855年以降、約40年間隔でほぼ同規模の地震が発生してきた{4}

 また、通常の地震より断層がゆっくりとずれ、人が感じる地震の揺れが小さくても、発生する津波の規模が大きくなるようないわゆる津波地震が起こることがある。津波により大災害が生じた1896年の明治三陸地震(M8 1/2)がその例である。この地震では、人が感じた揺れの大きさから推定される断層運動の規模よりもずっと大きな規模の断層運動が起こっていたことが明らかにされた。このように、体に感じられた揺れの程度だけから津波の有無や大小を判断するのが難しい地震もある。

2)沈み込む太平洋プレート内の地震

 被害地震としては、1933年の三陸地震(M8.1)が知られている。この地震は、太平洋プレートが陸側のプレートの下にまさに沈み込みを行おうとする日本海溝付近の浅いところで発生した正断層型の地震で、津波によって約3,000名もの死者{5}を出した。沈み込むプレート内で発生する地震には、このような正断層型の浅い地震以外にも被害をもたらす地震がある。千島海溝では、1993年の釧路沖地震(M7.8)が深いところ(深さ約100km)でほぼ水平な断層の断層運動により発生し、また、1994年の北海道東方沖地震(M8.1)が比較的浅いところ(深さ約20km)で傾斜角の大きな逆断層型の断層運動により発生した{6}。このように、沈み込むプレート内で発生する地震には、震源の深さや断層運動の形態も様々なものがある。

 最近では、1987年の岩手県北部の地震(M6.6、深さ約70km)によって小被害が生じた。