(2)中部地域(宗谷、上川、留萌、石狩、空知、胆振(苫小牧市より東)の各支庁)に被害を及ぼす地震及び地震活動の特徴

中部地域に被害を及ぼす地震は、太平洋側沖合の地震、日本海東縁部の地震、陸域の浅い地震などである。なお、中部地域とその周辺で発生した主な被害地震は、図3−28のとおりである。

 中部地域のうち、空知支庁南部より南の地域では、太平洋側沖合で発生する地震と、日高山脈南部で発生する地震で被害を受けることがある。例えば、1968年の十勝沖地震(M7.9)では、札幌市周辺ではおおむね震度4であったが、局地的に震度5相当の揺れがあり、地盤のごく軟弱な地域や新しく造成された団地などで家屋への被害が生じた。1982年の浦河沖地震(M7.1)では、苫小牧市や札幌市などで、負傷者や家屋の破損などの被害が生じた。空知支庁南部より北の地域では、地下深部(上部マントル)を通る地震波が大きく減衰するため、地震動が小さくなり、これらの地震による被害を受けることは少ない。

  中部地域のうち、石狩、留萌、宗谷の各支庁の日本海沿岸の地域では、日本海東縁部の地震で被害を受けることがある。例えば、1940年の神威岬沖(積丹半島沖)の地震(M7.5)では日本海沿岸を津波が襲い、死者10名、家屋流失20などの被害{31}が生じた。また、この地震の東側では、1947年の留萌沖の地震(M6.7)が発生し、津波を伴った。なお、天売・焼尻島から利尻・礼文島にかけての西方沖合は、これまでの地震の資料でも大地震が知られていないため、この海域を地震の空白域とする考え方もある{32}

 中部地域には、天塩山地、夕張山地、増毛山地などがほぼ南北に走り、夕張山地の西側に石狩平野が広がっている。図3−29は、中部地域の地形と主要な活断層を示したものである。この地域の主要な活断層としては、増毛山地東縁断層帯、石狩低地東縁断層帯、富良野盆地周辺の活断層などがあり、いずれも活動度B級の逆断層と考えられている。このうち、石狩平野と増毛山地の境に沿ってほぼ南北に走る増毛山地東縁断層帯は、最近の活断層調査から最近約10,000年間に数回の活動をした可能性が指摘されている{33}。このほか、北部のサロベツ原野では、活断層はほとんど見られないものの、段丘面や地層に著しい変形が見られる。なお、中部地域の活断層で発生した被害地震は歴史上知られていないが、活断層の活動間隔の多くは1,000年以上なので、そこで地震が発生しないということを示しているわけではない。

 中部地域の群発地震活動としては、規模の詳細は分からないが、1908年の礼文島付近の群発地震が知られている。

 中部地域では、陸域の浅い地震として、増毛山地の北東から東側で1986年の沼田町付近の地震(M5.3)や1995年の暑寒別岳東方の地震(M5.7)が発生し、小被害が生じた。このうち、1995年の地震では、北竜町で震度5を観測した。また、歴史の資料によると、1834年に石狩川河口付近で石狩地震(M6.4)が発生し、現在の札幌市の一部地域では震度5相当の揺れがあったと推定され、人口の少なかった当時でも被害が生じたことが記録されている。

 また、太平洋沿岸では、三陸沖での地震や、1960年のチリ地震のような外国の地震によって、津波による被害を受けることがある。

 なお、中部地域とその周辺における小さな地震まで含めた最近の浅い地震活動を図3−30に示す。