(2)津波被害

津波被害の場合、特に津波に対する知識や津波に関する正確かつ迅速な情報の伝達の有無が、人の生死を左右することがある。

 例えば、1896年の明治三陸地震(M8 1/2)では、その断層運動の規模は非常に大きかったにもかかわらず、感じられた地震動が小さかったこと、またその発生は旧暦の端午の節句の夕刻でありそれを祝う人々が屋内に集まっていたことなどから、住民の避難が遅れ、20,000名以上の溺死者を出したと言われている{23}。その一方で、1933年の三陸地震(M8.1)においては、多くの生命が失われたが(死者・行方不明者3,064名)、1896年の津波の教訓を生かして避難が効果的に行われたところでは、津波による犠牲者が少なかった{24}

 海域で発生したM6程度以上の地震に伴って津波が発生する可能性があること、来襲する津波の大きさは感じた地震動の大きさだけでは判断できないこと、遠く海外などで発生した大地震によっても大きな津波が来襲することがあること、津波の第1波より第2波以降の方が大きくなることもあることなどは、津波から身を守る上で重要な知識である。

 津波被害には、流水や漂流物の衝突による建物の被害、漁船の流失や養殖水産業や漁港施設への被害、田畑などへの浸水被害などもある。また、津波に流された家屋や漁船などから出火して火災を引き起こすこともある。さらに、川を遡行した津波による被害が生じることがある。