7−1 国府津−松田断層の最新活動時期とその変位量

国府津−松田断層の最新活動時期は曽我原トレンチ調査で明らかになった。曽我原トレンチでは、北傾斜の2条の断層(断層N、断層S)が確認された。断層NはH層からF層までを切り、B層(B1相)に覆われる。断層SはH層からC層までを切り、B層(B2相)に覆われる。最新活動はC層より新しく、B層より古い。その時期は14C暦年較正年代に従えば、AD650年〜AD 990年(C層)より新しく、AD430〜AD 1010年(B2相)より古いことになる。一方、これらの地層から出土した考古学遺物の年代に従えば、平安時代末の12世紀後半(C層)より新しく、13世紀中葉〜14世紀前葉((B1相)より古い。両者は矛盾するが、14C暦年較正年代が古文書の暦年代より100年〜400年程度古くなる例があること(奥野,1997)、曽我原トレンチにおける考古遺物の出土状況をみて考古遺物が後から混入したとは考えにくいことから、曽我原地点の最新活動時期として考古学的年代を採用する。最新活動時期はAD1100年〜AD1350年頃となる。

最新活動の変位量はC層あるいはD層の変位量であるが、これらの地層は断層隆起側には分布しない。そこで近似値としてトレンチの地形断面の高度差を上下変位量と仮定し、最新活動時の上下変位量は約1.6mと推定する。

なお、高田トレンチは空中写真判読によって抽出された低崖を横断して掘削されたが、断層は確認できなかった。この低崖は、西傾斜するT層、U層が作った緩斜面に由来する地形であり、明瞭な断層構造は確認できなかった。