1−2 調査の目的と調査の流れ

1995年1月の兵庫県南部地震は、都市直下のごく浅い活断層の活動によるものであり、これが劇甚な災害をもたらしたことは、記憶に鮮明なところである。

横浜市域における活断層としては、「新編 日本の活断層」(活断層研究会,1991)に記載はない。「活構造図 東京」(通商産業省工業技術院地質調査所,昭和57年)にも小規模な向斜軸、背斜軸が記載されているにすぎない。しかし、大学等がこれまでに実施してきた人工地震探査などの調査によれば、立川断層の延長上となる鶴見川付近において深い地盤層に大きな段差が報告されている。これは厚い堆積層に被覆されており、詳細は不明であるが、横浜市の実施している地震観測などによれば、この付近の深さ30km程度に微小地震が発生している。また、過去の歴史地震を振り返ってみると、市内に局地的な被害を与えた1649年(江戸,川崎),1697年(相模,武蔵),1812年(川崎)などの直下型地震ではないかと考えられる被害地震が発生している。これらが活断層によるものか、あるいはプレートの運動によるものかは判明していない。

このような状況から、本業務は横浜市域の活断層の存在とその性格(位置,長さ,深さ,確実度,活動性)を調査し、横浜市の地震防災対策の基礎的な資料とすることを目的としている。

本調査は、対象とする範囲が川崎市域にも及ぶことから、川崎市と作業を分担して実施した。

川崎市は、川崎市高津区から横浜市旭区までの延長約20kmでバイブロサイス反射法探査を実施し、深さ約4kmまでの範囲を対象とした。

横浜市は、深さ約2kmまでの範囲を対象とし、文献調査,地表踏査,重力探査及び浅層反射法探査を実施した。

また、業務を進めるにあたっては、横浜市活断層調査委員会を設置し、調査項目や調査方法を検討し、調査結果の評価検討を行った。

調査の流れは図1−1の流れ図に示す。