(3)地震の規模

実変位量(D)と、地震の規模マグニチュード(M)とは以下の式(松田による)に示すように比例関係にあるとされている。

logD=0.6M−4

上記式に従った場合、D=1.33〜1.58mとしてM=6.9〜7.0となる。

断層の長さから地震の規模を求めるために以下の式(松田による)を用いると、

logL=0.6M−2.9

菊川断層で確実度TとされるL=18kmで計算した場合、M=6.9となり実変位量(D)から求めた規模とほぼ同じとなる。また、最も活動度の高い中央部のセグメント(6.5km)のみの地震と考えた場合はM=6.2となる。

イベントTは菊川断層中央部及び南部で確認されている。地震の規模を下保木地区トレンチの変位量D=1.33mから推定した場合、M=6.9となる。その場合、菊川断層の北部、中央部、南部のほぼ全域(約18km)が活動したと考えられる。これは松田の式での計算結果(18km)とも調和的となる。下保木地区トレンチが南部セグメントの末端部であることから、一般に断層変位量が中央より末端部で減少する傾向があることを考慮すると実際の地震の規模はM=6.9以上である可能性が考えられる。

イベントVは、中央部のトレンチのみで確認されている。中央部での変位量1.58mから地震の規模を計算するとM=7.0となり地震の規模はイベントTよりも大きかった可能性が考えられる。南部の下保木地区で確認できなかったのは、菊川断層の末端部であるためと考えられ、菊川断層の北部、中部のみではなく、北の海域や南部の一部で活動があったものとの考え方もできる。

イベントUは、中央部で確認されている。変位量が確認できていないが、地震の規模は、イベントT・イベントVから考慮すると、同程度のものであったと推定され、菊川断層の海域〜北部、中部、南部の一部で活動があったものと考えられる。

以上をまとめると以下の様になる。また、図1−8−3に菊川断層セグメンテーションを示す。

・活断層としての長さ:18km〜20km(北部・中央部・南部の3つのセグメントに分かれる。:豊浦郡豊浦町本郷〜菊川町・下関市境付近)

・変位様式     :右横ずれ

・最終活動時期  :7,000〜2,080y B.P.

・再来間隔     :9,000〜11,500年

・平均変位速度  :0.12〜0.18m/1,000年(B級)

・単位変位量    :1.33〜1.58m(実変位量)

・地震の規模    :M=6.9〜7.0