(3)上岡枝上流地区トレンチ(菊川断層の中央部セグメントに属する)

調査目的:上岡枝上流地区は、菊川断層の中央部にあたり、上岡枝下流地区と同様に、調査地全域の中でも最も左横ずれが明瞭な区間に位置している。付近では堤他(1991)の既存トレンチ調査で20,000年〜15,000年前の活動を確認している。平成8年度調査では、基盤岩の段差、泥炭層の異常な屈曲を確認しており、堤他(1991)の既存トレンチ調査結果をふまえると、本地区では菊川断層は雁行し、小規模な破砕帯となっていくつかに分かれて存在する可能性がある。今年度の調査はそれらを確認し、さらに、泥炭層(約11,500年前)及びその下位層の分布する地域において、最終活動時期の確認及び特定を行う目的で実施した。

観察結果:基盤(頁岩・砂岩互層)に多数の断層を確認しているものの、泥炭層を含め基盤を被覆する地層に明瞭な変位は確認されなかった。

各種分析(放射性炭素年代測定、花粉分析、陶器破片の鑑定)結果から、調査地に分布する第四紀層は11,000y B.P.以降の堆積物が分布していることが明らかとなった。

活動性 :基盤岩の段差は、トレンチ内での基盤の凹凸が激しいことから、調査地周辺でも基盤の凹凸が激しいことが推定され、そのことを反映している可能性が高い。泥炭層の異常な屈曲については、トレンチ内での連続は確認されず、また、周辺で地層を切る断層も確認できていないことから、現段階では断層運動による変形とは考えにくい。

調査地の地形、トレンチ調査結果から、菊川断層本体は調査地より北東での存在の可能性は低い。基盤の地質断層と菊川断層の位置が一致していると仮定すれば、中生代ジュラ紀豊浦層群と豊西層群の境界、すなわちトレンチ調査地点よりも南西側に分布している可能性もある。