(2)上岡枝下流地区トレンチ(菊川断層の中央部セグメントに属する)

調査目的:上岡枝下流地区は菊川断層の中央部にあたり、調査地全域の中で最もリニアメントが明瞭な区間である。リニアメントは河川の左横ずれ変位が明瞭に観察される位置に判読される。その中でも断層変位地形が明瞭なさい頭谷内の堆積物の分布箇所において最終活動時期の把握を行う目的で実施した。

観察結果:断層は2箇所で確認された。一方の断層は、南側隆起の正断層で走向傾斜はN30°W60°Nを示し中央部の断層の走向と一致する。条線はSE43°方向で傾斜は15°Eを示す。第四紀堆積物に変位を与えており、第四紀堆積物を断層内に取り込んでいる。もう一方の断層は走向傾斜はN36°W64°Nを示し、断層粘土内に炭化物を取り込んでいる。断層粘土が絞り出され、第四紀堆積物に変位を与えているように観察される。鉛直変位量はレベル測量結果から41cm前後である。

活動性 :各種分析(放射性炭素年代測定、花粉分析、火山灰分析)結果及び観察結果から、7,000〜2,080±50年前の間にに最終活動があった。また、断層粘土内に炭化木が認められ、イベント時に断層内にとり込まれたものと推定される。この炭化木は29,450±190年前の年代を測定しており、現在は、約12,000年前以降の砂礫が主体の堆積層が覆っていることから、約29,000年前の堆積物が堆積していた当時のイベントが考えられる。以上から、2回のイベント(29,450±190〜12,080±50年前、7,000〜2,080±50年前)を確認し、鉛直変位量Dvは約41cm、条線の傾斜は15°であることから、計算により実変位量(net slip)Dは1.58m、水平変位量Dhは1.53mとなる。