5−6−5 浅層反射法探査解析結果

図5−6−2に測線位置図を図5−6−9に解析結果図を示す。図5−6−9の解析結果図はマイグレーション後の深度断面図である。時間断面からの深度変換には、測定記録中の屈折走時から求めた速度値を用いた。なお、巻末に各解析過程毎の解析処理例および解析結果図を載せた。

以下に図5−6−9の解析結果図から読みとれる特徴をまとめる。

(a)深度10〜20mに測線全体にほぼ連続的に分布する顕著な反射面が認められる。各地点のボーリング結果からこれらの反射面上面の深度と基盤岩の着岩深度とがほぼ一致する事が判明した。よって、この反射面は基盤岩上面からの反射であると思われる。

(b)a.とは逆に反射面の不連続な箇所としては、距離程195m付近,240m付近,および300m〜330m区間の3カ所が認められる。中でも300m〜330mの反射面はその前後で最大10m程度の大きなずれが生じている。なお、この箇所は推定される断層の位置とも一致している。

(c)距離程70m〜80mでは上記の明瞭な反射面がややぼやけている。原因としては地質の違いや破砕帯等の存在が考えられる。

(d)(b).で認められた反射面のズレを以下の方法によって検討した。

反射法探査の解析結果より、距離呈300〜330mにかけて反射面が不連続となっており、この箇所においてが断層が存在する可能性があることを指摘した。しかし、この付近における反射面(基盤岩上面)の深度は5m〜10m程度と浅く、反射法解析で用いたCDP重合法の前提条件のひとつ(起振点―受振点間距離に対して反射面の深度が十分に深い)が成り立っていない。このことより、解析結果(CDP重合断面)に現れた不連続な箇所およびその形態に誤差が生じている可能性がある。この不連続部の位置をより正確に求めるため、反射法探査のデータより読み取った初動走時を用いて屈折法の解析を行った。さらに得られた速度層モデルを用いて反射法のモデル計算を行うことによって、断層位置を検討した。

<屈折法解析>

ここでは、反射法探査のデータより読み取った初動走時を用いて屈折法の解析を行った。反射法では、測線距離あたりのデータ数は屈折法のデー多数よりも数倍多いが、受振点−起振点間隔の距離の短いデータしかないため、屈折法で通常用いられる萩原の方法は適用できない。したがって、以下に述べるようなジオトモグラフィーで解析でよく用いる逆解析技術を用いた方法で解析を行った。

@ 断層の存在が推定されている区間を含む範囲(ここでは距離呈260〜340m)起振を行った記録の初 動走時を読み取る。

A 1m×1mのセルで区切った初期モデルを作成し(初期モデルは水平構造として与えた)、このモデル地盤での初動走時をパス計算で求める。

B計算した走時と読み取った走時の差が小さくなるように、自動計算によりモデルを修正する。

C修正したモデル地盤での初動走時をパス計算で求める。

DB〜Cを繰り返す。残差が十分小さくなるか、繰り返し回数が20回を超えたところで、計算を 終了する。

図5−6−10に屈折法解析の結果として速度分布図を示す。速度分布図によると、距離呈320m付近で、速度300〜500m/s程度の低い速度層および速度1200m/s程度の中間層の層厚が急に薄くなっており、基盤岩の深度が浅くなっていることがわかる。このことより、距離呈320m付近のズレは断層変位に対応していると推定できる。

<モデル計算との比較>

屈折法解析で得られた速度モデルを用いて、実施した反射法探査と同じジオメトリ(起振点―受振点位置)でのモデル計算を行い理論波形を作成した。この理論波形と反射法探査の観測波形とを比較すると若干の相違があったため、速度モデルに変更を加え(距離呈320m〜330mの地表部の速度を大きくした)、この速度モデルでの理論波形を再度作成した。この修正後の速度モデルを図5−6−11に示した。この速度モデルによる理論波形と実際の観測波形との比較を図5−6−12−1および図5−6−12−2に示す。図5−6−12−1図5−6−12−2の比較より明らかのように理論波形と実波形は良く類似しており、測線下の速度構成はここで作成した速度モデルに近いものと考えることができる。この速度モデルにおいて距離呈310〜320m付近にかけて速度層(中間層)の層厚が大きく変化しており、これが基盤岩のズレ(断層変位)に対応していると推定される。