(1)分析結果

露頭から採取した有機物シルト層の4試料中2試料(試料番号41−1,41−3)から統計処理可能な個体数の花粉化石が検出された。産出花粉化石名とその出現率を表5−2−1および図5−2−3の花粉ダイアグラムに示した。なお、花粉化石の検出されなかった試料は、堆積後に紫外線や土壌中のバクテリアにより分解されたか、土壌化の影響で花粉が保存されなかったと推定される。

針葉樹では、トウヒ属(picea)が高率(38.7%と33.2%)に出現する。さらにモミ属(Abies)やスギ属(Cryptomeria)、ヒノキ科(Cupressaceae)を伴っている。露頭の見かけ上位のS−2は下位のS−1に比べ、スギ属が増加し、トウヒ属やヒノキ科がやや減少する。

落葉広葉樹としては、ハンノキ属(Alnus)、クマシデ属(Carpinus)、ニレ属―ケヤキ属(Ulmus−Zelkova)が10%以下で出現し、S−1とS−2間ではそれらの出現率に大きな差は認められない。

草本花粉ではヨモギ属(Artemisia)やカヤツリグサ科(Cyperaceae)の出現率が高く、セリ科(Umbeliferae)、キク亜科(Carduoideae)、イネ科(Gramineae)が5〜10%の出現率でこれにつづく。ヨモギ属はS−2において出現率が高く、反対にカヤツリグサ科はS−1において相対的に出現率が高くなっている。