5−2−1 地質踏査

大河内地区は菊川断層の北部に位置し、周辺では所々に三角末端面は認められるものの、変位地形は明瞭ではない。大河内地区では、第四紀の堆積物が著しく傾斜する構造を観察出来る法面が認めらる。堆積物の年代は更新世中期以前と推定されるため、最新活動時期等の活動履歴の検討は難しいと考えられるが、北部の変位様式を検討する上では重要な露頭と考えられた。したがって、大河内地区では露頭観察及び精査を行った。周辺の地質図を図5−2−1、法面のスケッチを図5−2−2に示す。

図5−2−1に示すように先第四系の分布は、法面周辺で、南西側に中生代白亜紀の関門層群下関亜層群の安山岩溶岩が分布し、北東側には同層群のデイサイト質火砕岩類が分布している。

これら先第四系に挟まれて、未固結の礫層・砂層・シルト層が分布する。これらの未固結の堆積物は、露頭で北側に向かい急傾斜している(写真5−2−1写真5−2−2)。

図5−2−2のスケッチ図に示すように、露頭南部(図の左側)では下関亜層群の安山岩を最下位の地層とし、これと断層(一部不整合)関係で安山岩角礫を多量に含み、淘汰の悪い礫層が分布する。この礫層の上位には、低角度断層を介して細礫・砂・シルト層が重なっている。級化層理・土壌化の状況から判断し、北(図の右側)に向かい上位層となっていると考えられる(写真5−2−1写真5−2−2)。

露頭北部(図の右側)では下関亜層群の安山岩の上位にデイサイト質火砕岩が断層関係で重なり、この上位にデイサイト質火砕岩礫を多量に含み、淘汰の悪い礫層が断層(不整合)で重なる。礫層の上位には、不整合(?)でシルト層が重なる。シルト層は直立するが、所々赤色土壌を挟在し、南に向かい上位層となっていると考えられる。上記したように、露頭南部では北に向かい上位層となっており、露頭中に閉じた向斜軸が存在すると解釈される。

露頭中には地質境界付近にせん断面が多数認められるが、地質構造上重要なものとして、下部の礫層と上部の砂・シルト主体層を境する低角度断層・地層傾斜が急傾斜となる境界に位置する断層・向斜軸付近の断層があげられる。これらの内下部層と上部層を境する断層は、写真に示すように破砕帯の非対称構造より、西に突き上げる衝上断層と判断される。

地層の走向・傾斜は山側に向かうに従い、WNW方向からNNW方向に変化しており、小断層を介して急傾斜となる。

山側の基盤岩類中の断層は、NNWからNE方向の低角度断層であり、東に連続する直線的なリニアメントの端部の破砕帯の可能性がある。