(12)北東−南西系の断層

長門構造帯と美祢層群の境界には、北東−南西走向で、高角度の傾斜をもつ断層が推定される。本調査ではその断層露頭を確認できなかったが、既存文献によれば、本地域における両地層の境界は断層であるとされている。また、長門構造帯の低温高圧結晶片岩と弱変成堆積岩類(豊東層群)の境界も、北東−南西走向の高角度断層、あるいは衝上断層(スラスト)であると報告されている(磯崎・田村、1989;椛島ほか、1993)。本来、結晶片岩と豊東層群はスラストで接しており、高角度断層は2次的な地殻変動によって形成されたと考えられている。

長門構造帯と豊浦層群の境界にも、同系統の高角度断層が認められる。木屋川の新湯の原ダム軸部においては、長門構造帯の緑色岩と豊浦層群の砂岩・頁岩が断層を介して接触していることが報告されている。

上岡枝地区に分布する豊西層群と関門層群脇野亜層群の境界付近にも、地形と岩石の分布状況の特徴から、北東−南西方向の高角度断層の存在が推定される。本質的に両層群は不整合関係にあり、豊西層群の上に脇野亜亜層群が載っている構造をもつが、高角度断層の形成により一部で断層接触にいたっていると推定される。