(3)豊浦層群(中生代ジュラ紀前〜中期)

@分布

茶屋川地区から北西方へ向けて、上諏訪(歌野ダム周辺)〜上岡枝藤内畑地区北方まで広範囲に分布する。茶屋川地区では、木屋川河床部にも露出が確認される。また、木屋川の南西側にあたる上大野地区にも分布する。菊川断層を挟んで茶屋川北西側と上大野地区の豊浦層群の水平分布のずれは約3kmである。

東側の長門構造帯とは不整合あるいは断層関係(新湯の原ダム軸部)にあり、西側では関門層群脇野亜層群に不整合に覆われる。

A岩相

構造的下位より、礫岩・砂岩・頁岩・砂岩・砂岩頁岩互層の順に累重する。砂岩頁岩互層の分布域に層理面の走向と調和的な褶曲軸が発達しているため(後述)、平面図上では、南東側から北西側に向かって、礫岩・砂岩・頁岩・砂岩・互層・砂岩の順に露出している。豊浦層群は、その堆積年代と岩相組合せから、東長野・西中山・歌野層の3累層に区分されているが、野外で正確な累層区分を行うことが困難なので、本調査では、岩相による区分だけを行った。概ね、下位の礫岩・砂岩層が東長野層に、頁岩層が西中山層に、さらに、上位の砂岩と砂岩頁岩互層が歌野層に対比されると考えられる。

礫岩は、径2〜3cm程度の砂岩・頁岩・チャート・結晶片岩等の亜円〜角礫からなり、硬く固結度が高い。砂岩は、細粒〜中粒のものがほとんどで、薄い頁岩を挟在する。木屋川河床部に露出するものをはじめ、下位の砂岩の多くがホルンフェルス化している。頁岩は、粗粒なものが多く、厚さ数cmの砂岩を挟むことがある。砂岩頁岩互層の単層の厚さは変化に富み、1cm程度の厚さで互層するものから、40cmを超えるものまで露出している。互層の分布域中程(歌野地区)の頁岩のなかには径5mm以下の石灰岩パッチを多量に含有するものも認められる。

B化石

ジュラ紀前〜中期の植物化石やアンモナイトおよび貝化石が多産する。砂岩頁岩互層(歌野層)のアンモナイト化石の一部は、北陸の手取層群あるいは南部北上の橋浦層群に産するものと共通の種をもち、本層はそれらの地層と対比される。植物化石は、中期ジュラ紀のウィルデン型を多産する。Oishi(1940)は、豊浦・豊西・手取・領石各層群の植物化石群がシダ類のOnychiopsis elongata を多産することから、これを“Onychiopsis series ”と呼んだ。また、その産出が朝鮮半島や山口県西部に限られるセンタイ類化石Thallites yabei が産することも特徴である(山口博物館、1975)。