(1)長門構造帯古期岩類、(古生代石炭期〜シルル紀)・豊東層群(古生代ペルム紀)

@分布

調査地域内の長門構造帯古期岩類および豊東層群は、木屋川東部の菊川町上保木地区と、下大野地区および下関市三町に分布する。両分布域は、菊川断層を挟んで直線距離で約3km程度、北西−南東方向にズレている(左横ズレ)。

長門構造帯古期岩類及び豊東層群は、その北西側で陸棚相ジュラ系豊浦層群に不整合に覆われ、南東側では、陸棚相トリアス系美祢層群と高角断層で境され、あるいは白亜紀後期の広島花崗岩類に貫かれている。

A岩相

長門構造帯は、低温高圧型結晶片岩類からなる長門構造帯古期岩類(三郡変成岩)と弱変成堆積岩類の豊東層群から構成されている。両岩石の境界は断層関係であると報告されているが(例えば、村上・西村、1979;猪木ほか、1986;椛島ほか、1993)、本調査では両岩石が接触する露頭を確認することはできなかった。

調査地内の低温高圧型結晶片岩類は、主に塩基性(緑色)片岩からなり、その露出は極めて小規模で、著しく風化されている。

豊東層群(高橋、1965)は、不均質な泥質岩からなる基質(マトリックス)中に、種々の大きさのチャート・緑色岩・変斑れい岩・蛇紋岩の岩塊をブロック状ないしレンズ状に伴う。これらの岩石は、乱雑な混在岩相を呈し、また著しい構造的擾乱によって整然とした層序を示さない(メラシジェ)。その産状および岩相組合せから、過去の付加コンプレックスの一部と判断されている(磯崎・田村、1989)。

B化石

調査地内からは化石は発見されていないが、調査地北東方の豊東層群からは化石の産出が報告されている。村上・西村(1979)は、石灰岩礫岩から石炭紀およびペルム紀のフズリナ化石の産出を報告し、磯崎・田村(1989)は、層状チャート岩塊からペルム紀古世前期の放散虫化石を発見している。

C放射年代

長門構造帯古期岩類の放射年代として、264Maと274MaのK−Ar年代(Nishimura et al., 1983)、および303MaのRb−Sr年代(柴田・西村、1989)が得られている。一方、猪木ほか(1986)は、弱変成堆積岩類(豊東層群)の片岩礫のK−Ar年代として、285Maと292Maという値を報告している。これらのことから、長門構造帯古期岩類は、三郡変成岩の最古の変成年代(約300Ma)をもつグループ、「三郡−蓮華変成岩」(Nishimura、1990)に帰属されるとされている。