4−3−1 平成12年度実施調査結果の概要

中部地域では、長井盆地の西縁部にあたる、朝日山地と長井盆地の境界付近に明瞭な断層変位地形が認められる。図4−3−1には八木(1999)による長井盆地の活断層分布図を示す。

変位地形の走向は盆地北西〜中西部にかけてはNE−SWが主体であるが、南部ではNNE〜SSWまたはN−Sが主体となる。変位地形の特徴は、盆地北西部では朝日山地からの支流による新期の扇状地が多数発達し、変位地形が不明瞭となる。中西部では高位段丘面、中位段丘面に認められる大きな撓曲崖と、その延長の低位段丘面および沖積面に認められる断層崖、撓曲崖で特徴づけられる。高位段丘面では背後に逆向きの撓曲崖を伴い、孤立丘状を呈する。盆地南西部でも、中位段丘面、低位段丘面に撓曲崖、断層崖が明瞭であるが、盆地の南部、白川流域では、断層が分岐し、地表での変位地形も不明瞭となる。

平成12年度においては、低位段丘L4面に変位が認められる長井市勧進代地区、平山地区で詳細調査を行った。また、小河川により形成された沖積面上の撓曲崖を対象として飯豊町深渕西地区において詳細調査を行った。

長井市勧進代地区の詳細地形区分図を図4−3−2に示す。本地区においては、高位〜中位段丘面に大きな撓曲崖が存在し、背後に逆向き撓曲が存在する。また、一部は孤立丘状を呈する。撓曲変形が低位段丘面に及んでいる地点において、浅層反射法探査・ボーリング調査を実施した。図4−3−3に浅層反射法探査結果を示す。反射法探査測線の山地側(西側)において、東に急傾斜する反射面群が明瞭に認められるが、これは基盤に相当する更新統の撓曲変形を示すものと推定された。平野側(東側)には、東に急傾斜する反射面にアバットする形で緩傾斜の反射面が認められる。この反射面は、低位段丘L2面堆積物に相当するものと推定され、地表にみられる撓曲崖付近において反射面にギャップも認められた。

以上の探査結果から、本地区において、更新世後期以降の断層運動が示唆された。

一方、反射法探査測線に沿って、4箇所で実施されたボーリング調査では、本地区を構成する地層のほとんどが扇状地性の砂礫を主体とする粗粒堆積物であり、年代測定に有効な炭質物が極めて少ないことが明らかとなった。従って、本地区でトレンチ調査を含めた継続調査は困難と判断し、比較的細粒堆積物が分布し、年代試料の得られる他の地区を選定する必要性が生じた。

長井市平山地区の詳細地形区分図を図4−3−4に示す。本地区では、西方の朝日山地から流下する野川の扇状地が発達し、扇状地面上にN−S走向の低断層崖が明瞭に認められる。

扇状地面は、分布や形態、古地形図等をもとに3つの時代的に異なる地形面L4−1〜L4−3面に区分された。また、低断層崖の比高が場所により異なり、古い扇状地面ほど比高が大きいことから、本地区では複数回のイベントがあり、変位の累積を保存している可能性が示唆された。最新活動時期については、八木(1999)によって明らかとなった本地区の年代値や平成12年度実施のボーリング調査結果(図4−3−5参照)より、約1,500〜3,100年前と推定された。

 

飯豊町深渕西地区の詳細地形区分図を図4−3−6に示す。本地区では、N−S方向に延びる撓曲崖が中位段丘面から低位段丘面にかけて連続し、一部、小河川により形成された沖積面にも変位が認められた。そこで、浅層反射法探査とボーリング調査を実施し、地質構造の把握と断層の活動性評価を行った。図4−3−7に浅層反射法探査結果を示す。反射法探査では、撓曲による地層の変形が非常に明瞭に認められた。また、深部の反射面ほど急傾斜となるため、変位の累積性も確認された。反射法探査の測線沿いで実施したボーリング調査では、本地区の構成層が、砂礫層・砂層・粘性土層の互層からなることが明らかになり、年代測定試料も多数得られた。図4−3−8にボーリング断面図を示す。本地区では、ボーリングでの地層対比や年代値、浅層反射法探査と合わせた地質構造の解析から、撓曲構造と新期の活動イベントを読むことができた。しかし、約4万年前以降、数千年前までの堆積物が欠如し、断層活動による複数回のイベントを読むことが困難であると考えられたことから、トレンチ調査を含めた継続調査は適当でないと判断した。