6−5−1 長井西縁断層帯

長井盆地西縁部には、新編日本の活断層(1991)において確実度T(北部ではU)とされる明瞭なリニアメント(活断層)が、段丘面および緩傾斜の扇状地面に変位を与えている。この活断層は、現在の長井盆地と朝日山地との分化について重要な役割を果たしてきたと考えられる。しかし、山形県の他地域の活断層帯に比べて調査事例が極めて少なく、最終活動時期や変位量など具体的な活動様式については、不明な点が多い。

そこで、平成12年度調査では、山形盆地境界部から長井盆地、米沢盆地にかけて広範囲な調査(空中写真判読、地表踏査[概査])を行い、この地域の活断層詳細図(ストリップマップ)を作成した。特に新しい時代の地形面に活動が認められる地区を抽出し、より詳細な地表踏査および地形測量を実施した。また、低位段丘面および沖積面に変位を与えている長井市勧進代地区、飯豊町深渕西地区においてトレンチ調査への事前調査としてボーリング調査と浅層反射法探査を実施した。その結果長井市勧進代地区では、浅層反射法探査によって段丘堆積物と考えられる地層の撓曲構造や、それにアバットする地層の様子が認められた。しかしながらボーリング調査において炭質物を含む細粒堆積物や鍵層は認められず、正確な変位量や年代を特定するには至らなかった。このような状況から、この地区においてトレンチ調査は適当でないと判断した。一方、飯豊町深渕西地区においても、浅層反射法探査において大きく傾斜した地層と、それを覆い変位している地層が認められた。またボーリング調査において礫層間に粘性土や炭質物が見いだされ、地層対比や浅層反射法探査による地質構造の解析から撓曲構造と新期の活動イベントを読むことができた。

しかし、4万年以降、数千年までの堆積物が欠如し、断層活動による複数回のイベントを読むことが不可能であると考えられることから、トレンチ調査には適当でないと判断した。 以上から、平成13年度調査においては、新規調査地点として長井市寺泉地区と飯豊町小山地区を提案する。長井市寺泉地区は平成12年度調査においてトレンチ調査候補地に選定したものの、用地関係から保留としていた地区である。今回、沖積面に変位地形が認められる地点において、トレンチ調査までの一連の調査を計画する。また飯豊町小山地区においては、地表踏査(概査)においてNL4扇状地面に3m程度の段差が認められた地区であり、今回、地表踏査(精査)およびボーリング調査を計画する。さらに、平成12年度調査で年代測定用の試料採取を主な目的としたボーリング調査を実施した長井市平山地区では、年代値の得られなかった最も古い扇状地面(NL4−1面)の形成年代を特定する目的で、継続して同様のボーリング調査を計画する。

以下、各地区の現地の状況を示すとともに、調査の目的およびその数量を示す。