3−2 既存資料要約

本調査地域の概要および他地域との関連性を把握するために以下の文献を収集した。

(1) 神保 悳(1960) : 山形県地質図

(2) 神保 悳(1965) : 山形県の地質

(3) 東北地方土木地質図編纂委員会(1988) : 東北地方土木地質図及び同解説書

(4) 地質調査所(1999) : 20万分の1地質図「村上」

(5) 地質調査所(1987) : 20万分の1地質図「仙台」

(6) 地質調査所(1985) : 20万分の1地質図「新潟」

(7) 地質調査所(1981) : 秋田・山形地域活構造図 , 20万分の1

(8) 地質調査所(1984) : 活構造図「新潟」

(9) 柳沢孝夫・山元孝広(1998) :5万分の1地質図幅「玉庭」及び同解説書

調査地域南西縁に位置する玉庭図幅地域には、中生代の堆積岩類および、中生代〜新生代古第三紀の深成岩類、新第三紀中新世〜鮮新世の堆積岩類、および第四系からなる。

玉庭図幅地域に分布する新第三系の層序表を図3−1−1 に示す。

従来米沢盆地周辺に分布するとされていた、赤色風化した砂礫層「玉庭層」は、中原層の赤色風化部とし中原層に含めている。しかしながらこの赤色風化帯は、やや不明瞭ながら平坦面を持つことから、地質図にはNwとして示した。

地質構造は、北北東−南南西と北北西−南南東の2系統の断層、褶曲が認められる。

特に図幅中央部では、これら2系統の断層と、これに沿う方向の翼の閉じたタイトな褶曲が多数認められる。

図3−1−1 玉庭図幅地域における新第三系の層序表

(10) 日本の地質「東北地方」編集委員会(1989) : 日本の地質2「東北地方」

調査範囲北部は、山形盆地西縁部にあたり、花崗岩類の基盤の上に、前期中新世の竜ヶ岳層、根子沢層、中期中新世の大井沢層、水沢層、後期中新世の間沢層、本郷層、鮮新世の左沢層、第四紀更新世の白鷹火山噴出物が堆積している。

表3−1−1 に山形地域の新第三系・第四系の対比表を示し、図3−1−2 に山形盆地西縁部の地質図を示す。

表3−1−1 山形地域の新第三系・第四系の対比表

図3−1−2 山形盆地西縁部の地質図

(11) 安彦宏人・安孫子政行・伊藤 修・柿崎政昭・名和時雄・西谷克彦・沼野達明・大場 稔・桜井和敏・鈴木雅広・高橋静夫・田中武夫・田宮良一・山形 理・吉田三郎(1979a) :5万分の1地質図幅「左沢」及び同解説書

左沢図幅範囲では、図3−1−3 に示すのような新第三紀以前の地層が分布する。

また、第四紀堆積物は、寒河江川、月布川両岸に分布する段丘堆積物が認められる。

・高位段丘:堆積物は分級の悪い20〜40cmの円礫を含み、地表から1〜4mは古赤色土化作用を受け、段丘礫内部まで粘土化がすすむ。

・中位段丘:寒河江川両岸によく発達し、砂礫層からなる。

海味、吉川では泥炭層を挟在し14C測定値では3万年代を示す。

図3−1−3 左沢図幅範囲における新第三紀以前の模式柱状図

(12) 安彦宏人・安孫子政行・伊藤 修・柿崎政昭・名和時雄・西谷克彦・沼野達明・大場 稔・桜井和敏・鈴木雅広・高橋静夫・田中武夫・田宮良一・山形 理・吉田三郎(1979b) :5万分の1地質図幅「荒砥」及び同解説書

荒砥図幅範囲には、図3−1−4 のような新第三紀以前の地層が分布する。

また、第四紀堆積物は、白鷹火山の噴出物およびそれによってせき止められた最上川による湖沼堆積物と、段丘堆積物が認められる。

白鷹火山の初期の堆積物である中山火砕流は、内陸盆地の地形面との関連から、噴出時期がリス/ヴュルム間氷期後〜ヴュルムU氷期間と想定される。

・中位段丘:能中、常盤、鮎貝、横田尻などに分布し、泥炭に含まれる花粉分析から、O1面(尾花沢1面)に対比される。

・低位段丘:宮宿、鮎貝付近に小規模に分布する。

地質構造は、NNE−SSW方向の背斜、向斜が繰り返す。この褶曲構造の特徴は、背斜の西翼が急傾斜で、東翼が緩傾斜であり、向斜部分はしばしば断層が認められる。

図3−1−4 荒砥図幅範囲における新第三紀以前の模式柱状図

(13) 皆川信弥(1971) :5万分の1地質図幅「手ノ子」及び同説明書

手ノ子図幅地域のうち東部が本調査範囲に含まれる。この地域では、先第三系の花崗閃緑岩類と変成岩類、新第三紀中新世〜鮮新世の堆積岩類および第四系が分布する。長井盆地西縁部において新第三系は、東に20〜30°傾斜しており、東側ほど上位の地層が現れる。

(14) 神保 悳・田宮良一・清水貞雄・佐藤康次郎・金子恒夫・北 卓治・矢崎清貫・今田 正・山形 理・大丸広一郎・寺江孝夫・小川敬三・本田康夫・渡辺則道・鈴木雅宏・加藤 啓・高橋静夫(1972) :5万分の1地質図幅説明書「赤湯」及び同説明書

赤湯図幅地域のうち、西部が本調査範囲に含まれる。この地域では、新第三紀中新世の伊佐沢層、および鮮新世の手ノ子層、中原層が分布する。伊佐沢層は、礫岩、砂岩、泥岩および凝灰岩で構成される。手ノ子層は、泥岩、砂岩、礫岩の互層よりなり、泥岩の発達するところには亜炭層を挟在する。中原層は礫岩を主体とし、砂岩、シルト岩などの薄層を挟在する。

第四系としては、2段の段丘面を構成する段丘堆積物があり、低位段丘堆積物中には泥炭も含まれ、白鷹町鮎貝では採掘されたことがある。

(15) 吉田三郎(1980) :5万分の1地質図幅「玉庭」及び同説明書

赤湯図幅地域のうち、北東部が本調査範囲に含まれる。この地域では、花崗閃緑岩および粘板岩、砂岩からなる基盤岩の上に、新第三紀中新世の小荒沢累層、明沢橋累層、白川累層と、鮮新世の宇津峠累層、高峯累層、手ノ子累層、中原累層、第四系の玉庭累層、沖積層が分布する。玉庭図幅地域における模式柱状図を図3−1−5 に示す。

玉庭図幅地域では、南部および南東部に基盤岩が分布しており、北部および北東部にむかって新生界が順序よく累重する地質構造を示している。その中で南北性の褶曲軸とこれを斜めに切る断層系が発達する。

図3−1−5 玉庭図幅地域における模式柱状図

(16) 神保 悳・田宮良一・鈴木雅宏・北 卓治・大丸広一郎・本田康夫・加藤 啓・北崎 明・清水貞雄・佐藤康次郎・玉ノ井正俊・高橋静夫・山田国洋・渡辺則道(1969b) :5万分の1地質図幅「米沢・関」及び同説明書

米沢・関図幅地域のうち、西部が本調査範囲に含まれる。この地域では、花崗閃緑岩の上に、新第三紀中新世〜鮮新世の綱木川層、小野川層、矢子層、才津層、高峯層、手ノ子層、中原層、第四紀の玉庭層、段丘堆積層、沖積層が分布する。米沢・関図幅西部地域における先第三系および第三系の模式柱状図を図3−1−6 に示す。

この地域では、北部に基盤岩があり、北部から南部に向かって新第三系のより上位の地層が累重するような地質構造をしている。図幅範囲西部では、北西−南東方向の断層系が発達する。

図3−1−6 米沢・関図幅地域西部における模式柱状図

(17) 米地文夫・阿子島功(1982) :5万分の1地形分類図「山形」及びU.地形分類.土地分類基本調査「山形」,5万分の1

台地および段丘は、高度および形成期によって、段丘T、U、Vに区分した。形成時期は、最も高位の段丘Tでリス−ヴュルム間氷期以前、段丘Uでヴュルム氷期後半、段丘面Vで沖積世と考えられる。

また、第四紀後期の断層地形と推定される地点が数カ所認められる。

(18) 吉田三郎・菅井敬一郎・鈴木生男・安彦宏人(1982) :5万分の1表層地質図「山形」及びV.表層地質.土地分類基本調査「山形」,5万分の1

花崗岩質岩石(花崗閃緑岩)を不整合におおってグリーンタフからなる新第三紀の諸累層が広く発達する。新第三紀の諸累層は下位から宝沢累層、高瀬累層、成沢累層(本沢累層)、山寺累層、本郷累層(山辺累層)、さらに上位に不整合をもって奈良沢累層が重なる。これらの新第三紀諸累層は中新世中期ないし後期の海底火山活動による酸性火砕流堆積物およびその砕屑物が大半をしめる。鮮新世の堆積物は存在しない。第四系としては、新期火山噴出物および平野部をつくる湖成堆積物、扇状地堆積物および段丘堆積物などである。

(19) 阿子島功・米地文夫・西谷克彦(1984) :5万分の1地形分類図「荒砥」及びU.地形分類.土地分類基本調査「荒砥」,5万分の1

台地は、高度および形成時期によって、高・中・低位の3群に区分した。

・高位面群

現河床との比高100m以上で、段丘堆積物は、風化され赤褐色を呈する。

和合平、上郷ダム東方、高岡、鮎貝北西方、森合などに分布する。

・中位面群

現河床との比高100〜50m以上

3万年B.P.より古い14C年代測定値がある。

三中、宮宿南西方、沼の平などに分布する。

・低位面群

3万年B.P.前後より新しい14C年代測定値がある。

左沢・宮宿・上郷ダム周辺に広く分布する。

構造性地形として明瞭なものは長井盆地北西縁の活断層地形である。しかしこの範囲において断層露頭は確認されていない。一方で長井盆地の北東縁に沿って断層地形は現れていないが、高位面群の段丘礫層を切る断層露頭が認められた。

(20) 吉田三郎・菅井敬一郎・鈴木生男・安彦宏人(1984) :5万分の1表層地質図「荒砥」及びV.表層地質.土地分類基本調査「荒砥」,5万分の1

基盤に白亜紀の花崗岩質岩石があり、これを不整合に覆う新第三系が広く発達し、されにこれを第四紀の堆積物や白鷹火山泥流が覆っている。

新第三系は中新世中期ないし後期の火砕岩を多く含む堆積岩と、鮮新世の堆積岩である。

第四系は、白鷹火山を中心として新期火山噴出物が分布し、最上川沿いに発達する段丘堆積物や扇状地堆積物がある。

地質構造は、朝日山地を中心に、その東部に若い地層が累重し、NNE−SSW方向の褶曲構造が特徴的である。

(21) 阿子島功・米地文夫(1990) :5万分の1地形分類図「小国・手ノ子」及びU.地形.土地分類基本調査「小国・手ノ子」,5万分の1

この地域には、地すべり地形と崩壊地形が至る所に発達しており、山地の地形変化は地すべり・崩壊によって起きているといっても過言ではない。山稜および谷は地質構造をよく表しており、おおまかにN−S方向のものが多い。山腹斜面の型も地すべり型の平滑・小起伏の斜面の多い地帯と崩壊性の急な線状谷地形の多い地帯とが交互に配列している。

台地および段丘は、高度および形成時期によって、段丘(T)、段丘(U)、段丘(V)の3群に区分した。

(22) 吉田三郎(1990) :5万分の1表層地質図「小国・手ノ子」及びV.表層地質.土地分類基本調査「小国・手ノ子」,5万分の1

本地域北部および西部に基盤の花崗岩質岩石およびこれの貫入をうけた古生界が分布し、南半部にはグリーンタフで特徴づけられる新第三系中新統が広く分布する。さらに南東部には、鮮新統がわずかに分布する。第四系は段丘堆積物と扇状地堆積物が分布する。

(23) 阿子島功・米地文夫・西谷克彦・長浜洋美(1983) :5万分の1地形分類図「赤湯・上山」及びU.地形分類.土地分類基本調査「赤湯・上山」,5万分の1

台地・段丘は、高度および形成時期によって以下の3群に区分した。

・台地・段丘T

古赤色風化殻を伴い、少なくとも最終間氷期(リス・ヴュルム間氷期=約10〜7万年前)以前の地形面と考えられる。

長井市西方の葉山山地山麓では、“クサリ礫”となっている花崗岩礫を主体とする砂礫層からなる堆積物が認められる。ここでは断層および開析谷によって分断され、より新期の段丘面(T・U)に縁どられている。

・台地・段丘U

段丘平坦面の保存が良く、かつ赤色風化殻が認められない。堆積物のC14年代が30000年より古い。飯豊町添川の玉庭丘陵北縁などに分布する。

・台地・段丘V

河岸段丘状の広い平坦面をなすものと、山麓のごく小さな堆積性・侵食性の緩斜面をなすものとがある。堆積物の14C年代はいずれも30000年B.P.のものが含まれている。いわゆる沖積面と小崖をもってへだてられ段丘面化しているものと、滑らかに連続しているものとがある。長井市白兎〜白鷹町高玉の最上川西岸の段丘面は葉山山地山麓の扇状地が最上川の側刻によって段丘化されたもので、構成層は花崗岩礫・アルコーズ砂のみよりなっており、本流河川敷にはみられる第三系由来の礫を全く含んでいない。この段丘崖は南方で消滅するので、長井盆地北半部における北上がりの傾動運動が予想される。

明瞭な断層変位地形は、長井盆地北西縁において認められる。ここでは、台地T・U(・V?)を切るNE−SW方向の断層が5〜6条認められる。

(24) 吉田三郎・菅井敬一郎・鈴木生男・安彦宏人(1983) :5万分の1表層地質図「赤湯・上山」及びV.表層地質.土地分類基本調査「赤湯・上山」,5万分の1

本地域には、基盤を構成する花崗閃緑岩と、これを覆う新第三系の堆積岩および火成岩、さらにこれらを覆う新期の安山岩、安山岩質火砕岩、第四紀の河成堆積層等からなる。

(25) 阿子島功(1992) :5万分の1地形分類図「玉庭・熱塩」及びU.地形.土地分類基本調査「玉庭・熱塩」,5万分の1

この地域における台地は、ほとんどが低い侵蝕段丘(岩石段丘)で谷底にそって幅狭く分布している。また山麓の地すべり地や崖錐地形とほぼ連続関係にあるものが多い。

(26) 山野井徹(1992) :5万分の1表層地質図「玉庭・熱塩」及びV.表層地質.土地分類基本調査「玉庭・熱塩」,5万分の1

この地域の表層地質は、南部に古い基盤岩類があり、その上に新第三紀の地層が順次北に傾きながら、累重することを基本としている。しかしその後の東西からの圧縮による構造運動をうけて、ほぼ東西にのびる褶曲や断層構造が発達している。こうした地質構造は東北日本の主要地質構造線である棚倉構造線の北方延長が本図幅範囲の南東部から北西部にかけてのびていることを反映したものである。

(27) 阿子島功・米地文夫・西谷克彦(1985) :5万分の1地形分類図「米沢・関」及びU.地形.土地分類基本調査「米沢・関」,5万分の1

台地および段丘は、現河床との比高により段丘(T)、段丘(U)、段丘(V)の3群に分けた。段丘(T)は、小樽川北岸の館山矢子町〜成島に分布している。

(28) 吉田三郎・菅井敬一郎・鈴木生男・安彦宏人(1985) :5万分の1表層地質図「米沢・関」及びV.表層地質.土地分類基本調査「米沢・関」,5万分の1

本図幅の基盤岩は、先第三系の片岩類と、それに貫入した花崗閃緑岩よりなり、それらを不整合に覆う新第三系が発達し、さらに第四系も広い範囲に見られる。

(29) 宇佐見龍夫(1997) : 新編日本被害地震総覧

本調査地域を震源とする被害地震は、1944年12月7日に起こったマグニチュード5.5の地震がある。その深度分布および震央の位置を図3−1−7に示す。

図3−1−7 左沢地震における深度分布および震央位置

(30) 活断層研究会(1991):新編日本の活断層−その分布と資料−

本調査範囲に示されている活断層は表3−1−2 のとおりである。その位置は図3−1−8に示す。

表3−1−2 調査地域の活断層

(31) 200万分の1活断層図編纂ワーキンググループ(2000) :「200万分の1日本列島活断層図」−過去数十万年の断層活動の特徴− , 活断層研究,19,3−12

地理情報データベース化された活断層の分布と属性データを編纂することで、日本列島に発達する活断層の特徴について検討した。(30)「新編日本の活断層」とは、活断層の定義とマッピング精度に違いがある。ここでいう活断層とは、“最近数十万年間に概ね千年から数万年の間隔で繰り返し活動しその痕跡が地形に現れ、今後も活動を繰り返すと考えられる断層”と定義し、地表での変位地形の確からしさをもとに「活断層」と「推定活断層」に区分している。また、マッピング精度は、2万5千分の1地形図を用い、それに記載された活断層線図をデジタル化したデータを用いている。

(32) 松田時彦(1995) : 陸上活断層の最新活動期の表 , 活断層研究,13,1−13

「新編日本の活断層」(活断層研究会,1991)および、その後に行われた各種調査をまとめて、「主要起震断層の表」と「掘削調査による活断層の活動歴の表」に示した。

長井盆地西縁断層帯は長さ21q,地震規模マグニチュード7.0,活動度Bとされている。

(33) 松田時彦・塚崎朋美・萩谷まり(2000) : 日本陸域の主な起震断層と地震の表−断層と地震の地方別分布関係− , 活断層研究,19,33−54

主要な起震断層と顕著な浅い地震との分布関係を調査した。

東北地方は地震分布密度および、断層分布密度とも北海道に次いで低い。また、東北地方の起震断層は縦ずれ断層が90%以上である。長井盆地西縁断層帯は、長さ20q,地震規模マグニチュード7.0,活動度Bとされている。

小樽川断層帯は、長さ11q,地震規模マグニチュード6.6,活動度Bとされている。

(34) 粟田泰夫(1999) : 東北本州弧内陸における断層の活動セグメント−その規模と活動性− , 地球 21,No.9,564−568

平均変位速度は日本海側ほど大きく、また断層活動の再来周期も日本海側ほど短い。

長井盆地西縁断層帯は長さ21q,鉛直方向の平均変位速度は0.5〜0.8m/kyである。

(35) 佐藤比呂志・池田安隆(1999) : 東北日本の主要断層モデル , 地球,21,9,569−575

巨視的にかつ長時間スケールで見ると、地殻の変形は時空間において大規模な断層の数を最小にして挙動しているというインバージョンテクトニクスに基づいて、東北日本の主要断層の形成史について検討した。

それによると、内陸盆地の交互配列や、内陸盆地における堆積中心の移動などを説明できる可能性が大きい。

(36) 宮内崇裕・今泉俊文・佐藤比呂志・池田安隆・東郷正美・八木浩司・渡辺満久・平野信一・澤 祥・平柳幸彦(1999) : 東北地方の主要活断層詳細図とその分布、変位速度からみた地震テクトニクス(演旨), 日本第四紀学会講演要旨集,29,142−143

大縮尺空中写真の詳細な判読に基づいた高精度のマッピング(縮尺1:25,000)を採用し、「新編日本の活断層」(活断層研究会,1991)を再検討した。

長井・米沢盆地西縁断層帯をはじめとした内陸盆地両縁の断層帯の上下変位速度は1o/年を越え、最も速い。

また変位速度の分布から、ひとつの断層帯は固有地震を起こすいくつかの単元(segmentation)から構成されている。

(37) 今泉俊文・宮内崇裕・佐藤比呂志・池田安隆・東郷正美・八木浩司・渡辺満久・平野信一・大月義徳・澤 祥・平柳幸彦(1998) : 東北地方の活断層詳細図(演旨), 地球惑星科学関連学会合同大会予稿集,1998,316

空中写真の詳細な判読に基づいて、活断層の位置、長さなどを再検討した。

長井盆地西縁断層帯など、脊梁山脈西側では後期更新世〜完新世の実変位速度が1.5o/年に達する。

(38) 鈴木敬治・吉田 義・真鍋健一(1977) : 東北地方南部地域における内陸盆地の発達史について , 地質学論集,14,45−64

会津盆地や福島盆地をはじめとした、東北地方南部の盆地の構造発達史をまとめた。

長井盆地の第四系は離水時期の古い方から5〜5.5万年前の長井T層、2.5〜3.0万年前の長井U層、1.5万年前の長井V層、1.0万年前の長井W層、4千年前の長井X層に区分される。

(39) 吉田三郎編(1984) : 山形の地質をめぐって

図3−1−9 に長井盆地の西側における活断層地形の位置を示す。

長井市中里の北にある古い扇状地礫層(第四紀洪積世)を切る断層露顕の写真(図3−1−9中のA)が示されている。

図3−1−9 長井盆地の西側の活断層地形

(40) 阿子島功(1986) : 活断層について , 山形応用地質 6,13−16

長井盆地西縁の洪積世扇状地礫層を切る断層

長井市中里の北に、赤色風化した花崗岩礫よりなる扇状地礫層中に破砕帯の幅50p,走向N50゜E 60゜南傾斜の正断層が認められる。

長井盆地北縁の高位段丘層を切る断層

白鷹町高岡において、基盤の第三紀中新世の砂岩層と段丘礫層が接している。

走向EW,傾斜は90〜70゜Nである。

(41) 町田 洋、新井房夫(1992) : 火山灰アトラス

日本列島およびその周辺地域の第四紀後期の広域テフラの分布を、図3−1−10に示す。

図3−1−10 日本列島およびその周辺地域の第四紀後期の広域テフラの分布

(42) 山野井徹(1986) : 山形でも発見された姶良(鹿児島県)の火山灰 , 山形応用地質,6,77

村山市浮沼で実施したボーリングのコアを詳細に観察した結果、地表震度9.6m付近に厚さ数pのAT(姶良の火山灰)を発見した。

また、白竜湖岸でのボーリングのコアでも深度19.5mにAT(姶良の火山灰)を発見した。

(43) 西城 潔・小松原琢(1988) : 飯豊・朝日山地稜線部にみられる完新世中期の広域テフラとその山地斜面編年上の意義について , 地学雑誌,97,6,611−618

飯豊・朝日山地地域にみられるガラス質火山灰について検討した。

その結果、泥炭質土壌中から2枚のガラス質火山灰を見出した。下位のものは鬼界アカホヤ火山灰(K−Ah)であり、上位のものは東北地方南部に分布する吾妻火山灰(Az)である。

(44) 阿子島功・壇原 徹(1991) : 東北地方、10C頃の降下火山灰について , 中川久夫教授退官記念地質学論文集,1−9

東北地方に広く分布する10C頃の考古遺跡のマーカーテフラとされている、いわゆる灰白色火山灰について、屈折率、重鉱物組成などを再検討し、1万年以降の火山灰と比較検討した。

その結果、いわゆる灰白色火山灰と呼んでいるものは、単一火山灰として大きな矛盾は見いだせなかった。

(45) 早田 勉・八木浩司(1991) : 東北地方の第四紀テフラの研究 , 第四紀研究,30,5,369−378

東北地方の脊梁山脈に第四紀火山が数多く分布しており、過去に大量のテフラを噴出してきた。山形県南部においては、これらのテフラはほとんど分布していない。

(46) 藤原健蔵(1967) : 山形盆地の地形発達 , 地理学評論,40,523−542

(47) 阿子島功(1999) : 寒河江市付近の最上川段丘面と氾濫原面の形成年代と活構造運動 , 山形県寒河江市埋蔵文化財調査報告書第19集落衣長者屋敷遺跡発掘調査報告書

高瀬山より上流区間の地形面は、おおむね4群10面に分けられる。M面に断層露顕が認められる。

(48) 阿子島功(1999) : 内陸盆地の最下位段丘面と氾濫原の識別の問題−山形県最上川中流−(演旨), 季刊地理学,51,3,238−240

(49) 鈴木康弘(1988) : 新庄盆地・山形盆地の活構造と盆地発達過程 , 地理学評論,61−4,332−349

(50) 小松原琢(1997) : 山形盆地の地質構造と環境地学 , 地質ニュース,512,20−26

(51) 山野井徹・山本いづみ(1999) : 山形県寒河江市南方高瀬山の地質 , 山形応用地質,19,9−15

(52) 阿子島功(1984) : 山形盆地の埋積過程と地盤型 , 山形応用地質,4,1−8

(53) 阿子島功(1995) : 山形盆地西縁の活断層群 , 山形応用地質,15,32−33

(54) 鈴木康弘・阿子島功(1987) : 山形盆地北西縁、大高根における完新世断層露頭 , 活断層研究,4,21−27

(55) 阿子島功・佐藤庄一・水戸弘美・佐竹桂一・植松暁彦(1997) : 山形県内陸盆地の

噴砂・地盤流動化の痕跡−寒河江市三条遺跡− , 山形応用地質,17,46−51

(56) 阿子島功・水戸弘美・植松暁彦(1998) : 山形県寒河江市三条遺跡でみられた噴砂・地盤流動化痕跡−考古学的手法による地下水位の復原− , 季刊地理学,50−1,88−89

(57) 八木浩司・澤 祥・平野信一・今泉俊文・宮内崇裕・佐藤比呂志・池田安隆(1998) : 山形、新庄盆地の活断層(演旨), 地球惑星科学関連学会合同大会予稿集,1998,323

(58) 今泉俊文・佐藤比呂志・八木浩司・宮内崇裕(1999) : 山形盆地、新庄盆地の活断層、活構造(演旨), 地球惑星科学関連学会合同大会予稿集,1999,Sb−P017

北部地域(大江町〜朝日町〜白鷹町北部)

(59) 佐竹伸一(1989) : 最上川中流部、五百川峡谷周辺の地質と大地の成り立ち , 山形応用地質,9,17−24

荒砥から左沢にかけての地域は、花崗岩類、第三系、第四系からなる。

第三系は下位から竜ヶ岳層、本道寺層、杉山層、本郷層に区分される。

第四系は崖錐堆積物、中山火砕流、白鷹山溶岩、段丘堆積物からなる。

図3−1−11 五百川峡谷周辺の地質図

図3−1−12 五百川峡谷周辺の地すべり地形・線構造地形

(60) 佐竹伸一(2000) : 最上川中流部・朝日町三中地区の構造地形について , 山形応用地質,20,77−80

朝日町三中地区には果沼と呼ばれる凹地形が存在する。この東側の丘陵にはクロボク土を含む堆積物が急立しているのが認められる。この付近一帯は断層運動と地すべりによって複雑な地形を呈しており、凹地形とその東側の丘陵を形成した構造運動はこれらの活動と一連であると考えられる。また、その形成時期は1万年以降である可能性が高い。

(61) 豊島正幸(1976) : 遷急点の後退と河岸段丘−最上川中流、大谷付近の例− , 東北地理,28,181

最上川中流部大谷付近に存在する環流丘陵付近を調査し、遷急点の消失の過程と河床の変遷を考察した。

(62) 豊島正幸(1977) : 最上川中流部、山形・長井両盆地間の河岸段丘 , 東北地理,29−4,221−227

山形盆地と長い盆地の間の約25qにわたる五百川峡谷地域を対象とし、河岸段丘の発達史を考察した。

段丘面をT〜Xの段丘群と分類した(図3−1−13)。

・段丘群Tは比高200〜140mで上部に赤色風化殻が見られ,下流にむかって高度を下げない地形面である。

・段丘群Uは比高140〜70mで各段丘面は開析されているものの、平坦面は残っている。基底礫層が断層により15mくいちがっている。

・段丘層Vは70〜50mで、これに属する段丘面の数は少ない。朝日川合流点付近では変位が認められる。

・段丘群Wは比高50〜数mであり、上部(Wu)と下部(Wl)に細分できる。左沢付近のWlの堆積物からは26000〜31000年の14C年代が得られている。大谷付近および朝日川合流点付近では変位が認められている。

図3−1−13 最上川中流部、山形・長井両盆地間における段丘分布図

中部地域(白鷹町南部〜長井市〜飯豊町)

(63) 山形 理・新戸部隆(1973) : 長井盆地第四系の花粉フローラ , 山形県の地質と資源 原口九萬教授退官記念,67−73

長井盆地に発達する段丘を高位より姫城面、草岡面、荒砥面、蚕桑面の4面に区分した(図3−1−14)。花粉フローラの対比、地層の風化程度、地形面の形態などから、姫城面はミンデル−リス間氷期に、草岡面はリス−ウルム間氷期に形成したと考えられる。

図3−1−14 長井盆地段丘面分布図

表3−1−3山形県第四紀層地形面対比表(最上団研グループ)

(64) 米地文夫・阿子島功・西谷克彦・長浜洋美(1983) : 米沢盆地北縁・長井盆地の地形面と第四系(予報), 東北地理,35,3,149−150

玉庭丘陵には玉庭層と呼ばれる層厚30m以上の火山灰層あるいは砂礫層が分布するとされてきた。しかし、下位の中原層との区分は困難である。

段丘堆積物は、地形区分ともあわせて3群(上位から段丘層T,U,V)に分けられる。

段丘層T:赤色風化殻を伴う。長井盆地北西縁では高位の扇状地面の堆積物に相当する。

段丘層U:平坦面の保存が良く、赤色風化殻が不明瞭。14C年代は3万年より古い。

段丘層V:14C年代は3万年より新しく、数千年のものも含まれる。河岸段丘状をなす

ものと、山麓のごく小さな堆積性・浸食性の緩斜面をなすものがある。

(65) 平柳幸彦・宮内崇裕・今泉俊文・佐藤比呂志・八木浩司・池田安隆・東郷正美(1998) : 長井盆地・米沢盆地西縁の活断層と第四紀後期の活動性評価(要旨), 地球惑星科学関連学会合同大会予稿集,1998,323

大縮尺の空中写真を用いて、活断層詳細位置図を作成するとともに、現地調査などを行った。

1. 長井盆地西縁断層帯

NNE−SSW走向で、長さ19q

平均変位速度は1o/年を越える。

完新世扇状地面に、低断層崖として上下変位(3m)が見られる。

2. 米沢盆地西縁断層帯

南北走向で、長さ16q

平均変位速度は0.5〜1.0o/年であり、完新世の活動は不明である。

両断層帯はその境界付近で変位量の収束傾向は見られないので、地下深部の同一断層から分岐した断層である可能性が高い。

(66) 八木浩司・平賀正和(1999) : 長井盆地西縁の活断層の最終活動時期と活動度(演旨), 季刊地理学,51,3,243

長井盆地に発達する段丘面は、朝日山地側から流下する河川が作った扇状地性の地形面であり、高位から純にT〜Z面に区分される。

W面以下が最終氷期の地形面と考えられる。Y面および、それに連続する扇状地面の離水時期は地点ごとに差があって、晩―後氷期以降3千年前頃までに離水したと予想される。 また、簡易測量を実施した結果、断層変位量はW面で6〜7m、X面で4m、Y面および扇状地面で1.5〜3mであることが明らかになった。

このことから、断層変位地形には、累積性が認められ、X面を2万年前の地形面とすれば、平均変位速度は、0.2o/年が得られる。Y面および扇状地面では場所により変位量に2倍程度の差異が認められる。これは離水時期の違いにより、部分的に2回分の断層変位を累積している可能性がある。

(67) 八木浩司(1999) : 山形県・長井盆地西縁の活断層の最終活動時期と活動度 , 後氷期の重要地質事象に関する高精度年代測定の実用化に関する研究,33−38

長井盆地に発達する段丘面は、朝日山地側から流下する河川が作った扇状地性の地形面であり、高位から順にT〜Z面に区分される(図3−1−15)。

W面以下が最終氷期の地形面と考えられる。Y面および、それに連続する扇状地面の離水時期は地点ごとに差があって、晩―後氷期以降3千年前頃までに離水したと予想される。また、簡易測量を実施した結果、断層変位量はW面で6〜7m、X面で4m、Y面および扇状地面で1.5〜3mであることが明らかになった。

このことから、断層変位地形には、累積性が認められ、X面を2万年前の地形面とすれば、平均変位速度は、0.2o/年が得られる。Y面および扇状地面では場所により変位量に2倍程度の差異が認められる。これは離水時期の違いにより、部分的に2回分の断層変位を累積している可能性がある。

図3−1−15 長井盆地の地形分類図と活断層の分布

図3−1−16 長井盆地西縁に発達する断層変位地形の地形断面図

(68) 矢崎清貫・石原舜三・桑形久夫・市川賢一・桂島 茂・金井孝夫(1969) : 長井市西方山地の新第三系とウラン鉱床 , 地質調査所報告書,232,535−561

長井市西方山地には、花崗岩類、新第三系、第四系が分布する。地質柱状図を図3−1−17に示す。

褶曲はNW−SE方向のものがくり返す。

断層はNE−SW、NNE−SSW、N−S方向の3系統認められる。

図3−1−17 長井市西方山地における地質柱状図

(69) 長井市教育委員会(1997) : 市内遺跡発掘調査報告書(5)

(70) 高杉魂美(1997) : 長井西断層における浅層反射法探査 , 山形大学卒論

断層の正確な位置および変位量を調べる目的で、飯豊町萩生地区(萩生川北岸)において、東西約200mの側線で浅層反射法探査を実施した。

連続性のある反射面が地下30−100m、120−140m、190−240mの位置に認められた。

これらの反射面の傾斜は、それぞれ26°、44°、48°と深部ほど大きくなっている。

またこれらの傾きは、山側にいくにつれてゆるくなるが、断層に相当するような反射面のずれは認められなかった。

このことから、断層運動による地殻変動の蓄積が認められるものの、断層本体は、測定位置よりさらに西(山)側に位置していることが予想される。

南部地域(川西町〜米沢市)

(71) 皆川信弥(1959b) : 米沢盆地周辺における新第三紀層の層位学および古生物学的研究(その1)−西縁および西南縁の層位− , 地質学雑誌,65,364−373

米沢盆地西・西南縁に発達する地層は、下位から八谷層群(不動沢層・北小国層)、置賜層群(眼鏡橋層・小国層・明沢橋層・沼沢層・湯小屋層・宇津峠層)、白川層群(高峰層・手ノ子層・中原層)および玉庭層である。

図3−1−18 に米沢盆地西縁および西南縁における総合柱状図を示し、図3−1−19 に米沢盆地西縁および西南縁における地質図を示す。

図3−1−18 米沢盆地西縁および西南縁における総合柱状図

図3−1−19 米沢盆地西縁および西南縁における地質図

(72) 皆川信弥(1959c) : 米沢盆地周辺における新第三紀層の層位学および古生物学的研究(その2)−西部および西南部の岩相変化・火成活動・対比− , 地質学雑誌,65,483−493

・八谷層群の分布は局部的であるため、岩相変化の実態は不明であるが、上半部には酸

性凝灰岩およびその砕屑物が発達する。

・置賜層群の下半部(眼鏡橋層・小国層・明沢橋層)は岩相変化が比較的はげしい。

・沼沢層〜湯小屋層は最下部をのぞいて火成活動は弱い。

・宇津峠層の下半部は均質な凝灰質砂岩あるいは凝灰岩であるが、溶岩は認められない。

・白川層群は下半部にやや凝灰質な部分を含むものの、上部へ次第に減少し、中原層ではほとんど認められなくなる。

・玉庭層は中性の集塊岩を含むが、起源は不明である。

(73) 皆川信弥(1960a) : 米沢盆地周辺における新第三紀層の層位学および古生物学的研究(その3)−北縁(吉野地域)における層序および対比− , 地質学雑誌,66,393−404

米沢盆地北縁(吉野地域)における地層の層序は4地区(吉野川中・上流地区、吉野川下流地区、鉄道沿線、今泉―伊佐沢地区)に分割される。

米沢盆地北縁部における層序表を、図3−1−20 に示す。

図3−1−20 米沢盆地北縁部における層序表

(74) 本田康夫(1983) : 米沢盆地の基盤構造 , 山形応用地質,3,21−26

重力探査、地震探査およびさく井資料などから米沢盆地床下における先第四系の分布等深線を画くと図3−1−21 のようになる。

第四系は盆地中央部より西側で最も厚くなり厚さ200mを越える。

図3−1−21 米沢盆地周辺の地質概念図及び基盤岩等深線図

(75) 川辺孝幸・舟山 守(1995) : 米沢盆地南部の表層の岩相分布 , 山形大学紀要(自然科学),13,4,277−297

米沢盆地南部において実施した比較的密な表層ボーリング資料にもとづいた岩相分布とその堆積環境を以下に示す。

・20m以浅の岩相分布は現在の河川系と同様な河川系が発達していたことを示している。

・深度0〜10m区間の方が、深度10〜20m区間よりも細粒堆積物が多く含まれている。これは細粒堆積物の供給量が減少したことを示している。

・西側には細長く伸びた舌状の泥含有率の低い部分が認められる。これは、西側からの木場川が盆地に入っても、そのまま流向を変えずに流路をとったことを示している。

・南側からの堆積物は泥含有率の分布形態より、扇状地をつくっていたことを示している。

・米沢市市街地より北側では、泥含有率の高い部分と、低い部分が帯状に配列している。このことは南側の扇状地を流れてきた河川が、後背湿地を伴い北流していたものと推定される。

・米沢市市街地西部には、北東―南西方向に細長く伸びた泥含有率の高い部分が発達する。これは西側から河川の粗粒物質の供給がなく、同時に南側からの扇状地の粗粒物質の届かない後背湿地であったと考えられる。

(76) 阿子島功(2000) : 地すべり・土石流の考古学(2), 山形応用地質,20,1−10

米沢市小野川笹原遺跡

縄文時代中期の遺跡であり、約4000年前の旧表土を、地すべり起源の土石流堆積層が覆っている。

(77) 米地文夫・山形 理(1974) : 山形県・中津川谷底平野のC−14法による絶対年代, 山形大学紀要(自然科学),8,3,465−470

最上川上流の白川は、飯豊山地から北流し、中津川谷底平野に入り、長井盆地に流入する。この谷底平野に発達する段丘面は、上位から順に高位段丘T,U面、中位段丘T,U面、低位段丘面、沖積低地面からなる。このうち高位段丘面T面およびU面は、下流において白川がせき止められてできた湖に伴って形成した面と推定される。 14C法による年代測定の結果は以下のとおりである。

 高位段丘T面 >31900年B.P.

 高位段丘U面   29600±1700年B.P.

 低位段丘面    3460±100年B.P.

調査地域における温泉掘削ボーリングおよび、各種土木工事の調査ボーリングのうち、特に基盤の地質構造を推定するのに有効と考えられるものについて、柱状図を収集した。

ボーリング深度および岩相を表3−1−4 に、その位置を図3−1−22に示す。

表3−1−4  調査地域におけるボーリング