3−1−1 調査仕様及び数量決定の経緯

本地区は以下の順序で調査を実施した。調査位置平面図を図3−1−1に示す。

@ジオスライサー試料採取

A観察・記載

B補足ボーリング調査

C年代測定

D解析

本地区では、鈴木・他(1989)によるトレンチ調査及び鈴木他(1994)によるボーリング調査が行われており、断層の最終イベントが2,500年前以降、それ以前のイベントが4,300〜5,500年前及び6,000〜6,300年前の2回推定されている。一方、平成10年度の調査では、4本のボーリング調査が実施され、鈴木・他(1994)で想定したのとは異なる地質構造(傾動を伴う幅広い変形帯)である可能性が指摘されている。

本調査では上記の点を整理する目的で、シートパイルを用いて試料を採取するジオスライサー工法により、地質構造を横切る幅48mの区間において深度約8m、幅約40cm、厚さ約10cmの試料を計21本採取し、地質観察を行った。調査深度の設定に際しては既往結果から約6,000年前の腐植土層を確実に採取できる深度とした。打設間隔については、最初6m間隔で調査を行い概略の試料観察をした後、地層対比の困難な箇所または地質構造が複雑と思われる箇所についてその間を埋めるような形で調査を行った。山側より調査を開始し地層の傾斜に注意しながら順次平野側の調査を行った。道路より約2m手前の地点付近でほぼ地層が水平になったのを確認し調査を終了した。重機は50tラフタークレーンを使用した(35tでは引き抜きが不可能であった)。

また、ジオスライサー調査結果の整理後、特に地質構造が複雑であるNo.8とNo.9の間において補足ボーリングを実施した。補足ボーリングの深度は、ジオスライサーよりもやや深部、更新世の地層を確認するまでとし、深度10mの調査を行った。なお、ボーリングの掘削孔径及びサンプリング方法は、コアの層相観察及び年代測定用試料採取の目的から、原則としてφ86mm、ダブルコアチューブによるオールコアサンプリングとした(以下、他地点についても同様である)。

ジオスライサー調査の概要を以下に示す。

ジオスライサー調査は、トレンチ調査に変わる活断層調査手法として開発された手法で、地層抜き取り装置(Geo−slicer)と建設現場において一般的な鋼矢板打ち込み工法を組み合わせた調査方法である。

本調査の特徴を以下に示す。

・連続した定方位の試料が採取できる。

・定方位試料による地質構造の観察が可能である。

・地盤状況により10m以上の深度まで試料採取が行える。

・トレンチ調査に比べて用地の制約が少なく、低コストである。

装置の原理と作業手順

地層抜き取り装置の原理を図3−1−2に示す。本装置は2つに分割したサンプラー(鋼矢板と蓋板)を2段階に分けて地盤の中に差し込んで、それを同時に地盤から引き抜くことによりその中に挟まれた地層を抜き取る方法である。

作業は以下の手順で実施する。

@ 測線上の設定された位置に、所定の長さの鋼矢板を定方位で鉛直にバイブロハンマーで地盤中に打ち込む。

A 鋼矢板に沿ってこれを包み込むように設計された蓋板を同様にバイブロハンマーで打ち込む。矢板と蓋板の間に地層を挟み込み、最終的に地層と蓋板を一体化させる。

B 定方位連続地層採取装置全体を引き抜く。

C 定方位連続地層採取装置を所定の平坦地に蓋板を上にしておろす。

D 蓋板を外し、矢板の中の地層を露出させる。

E 抜き取った地層の表面を洗浄・整形後、必要な所定の観察・記載・サンプリング作業を行う。

F 所定の作業が終わった抜取り試料は、矢板から切り離し残土処理を行う。

G 地層を抜きとった穴を、所定の土で埋め戻し復旧する。