2−3−4 山辺町大寺地区の調査方針

山辺町大寺地区は山形盆地断層帯南部地区のほぼ中央部に位置する。この地域では断層変位によって形成されたと推定される崖地形が南北に連続している。

平成10年度、山形盆地断層帯のうち南部区間の最新活動時期、活動間隔、単位変位量などを明らかにすることを目的として本地区において3地点でトレンチ調査を実施した。その結果、トレンチ@において西側に傾斜する南北走向の低角逆断層(fa断層)が確認され、最新活動時期は3,890〜4,400年前と推定された。トレンチA及びB−1)では、明瞭な断層は確認されなかったが、地層の変形や傾斜変換部により断層による変位が確認され、約9,000年前前後に断層活動による地層変形があった可能性が示された。この約9,000年前前後の断層活動時期を特定することは、山形盆地断層帯南部の活動間隔を特定するために重要な意味をもっているため、今年度はこの地区における補完調査を以下のように計画した。

トレンチ@地点の断層上盤側においてボーリング調査を実施する。この地点の断層下盤側ではトレンチ調査およびこれに先行するボーリング調査によって約10,000年前の地層,約14,000年前の地層,約17,000年前の地層が確認され、これらの地層の連続と分布高度が明らかにされている。断層上盤側の時間面とその高度ならびに傾斜を知ることにより10,000年もしくは17,000以降の総変位量を求めることが可能となる。

トレンチB−2),B−3)地点の調査では、約10,000年前の地層が大きく変形し約10,000〜9,000年前に断層活動による地層変形が起った可能性が認められた。この変形の時期を特定するためにトレンチB−3)の前面に複数のボーリング調査ならびに極浅層のコア採取を行い、層相から傾斜した地層とこれを覆う水平層を区分し、得られた試料の年代値から約10,000〜9,000年前の断層活動の存在を検討する。またトレンチB−2)付近において地層観察ピットを掘削し、地層変形形態の異なる地層の分布と年代を明らかにすることによって約10,000年前の地層が急傾斜した断層活動が単一か複数回であるかを検討することとした。

調査地点を図2−3−5に示した(基図は平成9年度作成のストリップマップを用いた)。