5−2−2 トレンチ調査実施の留意点

平成10年度調査ではボーリング調査4地点を実施し、断層の確認と幅約200mの幅における完新世の撓曲変形について検討した。この結果から想定される断層の活動履歴を明らかにするためにはトレンチ調査の実施が必要と考えられる。この時、断層の活動間隔を求める場合には鈴木、他(1994)の想定通りの場合には掘削深度は7m程度必要となる。ただし、断層面が地表まで到達せず断層活動が地層の撓曲変形を起しているだけの場合にはこれに対応した縦長のトレンチ調査によって異なる地層の傾斜と堆積時代を検討し、ここから断層活動(撓曲運動)の履歴を明らかにしなければならない。

トレンチ掘削は図5−2−2および図5−2−3に示した地点で行う。この地点では、約3,000年前の地層と5,000〜7,000年前の地層が斜交関係をもつことを確認し、その厳密な層準の確認を行う。ただし、このボーリング地点No.1孔とNo.2孔の間における地層の高度差がずれを伴う断層運動によって生じた可能性もあり、掘削時には十分な注意と的確な判断が必要になる。

No.1孔とNo.2孔間の地層の高度差についてその原因が明らかになった後、約3,000年前の地層とより上位の地層の関係を明らかにする必要がある。この時、地層の高度差がずれを伴う断層によって生じており、この断層が約3,000年の地層を切っている場合、断層の活動履歴のうち確認できる最終活動は、鈴木、他(1994)と同様である可能性が高い。

ずれを伴う断層面が確認されない場合には各地層ごとの傾斜と堆積時の傾斜を検討しこの傾斜の相違を個々に観察する。この時、約5,000〜7,000年前の地層では基底部と堆積頂面では、ボーリング結果から明らかな傾斜の差が認められており、この間の傾斜変化および各地層の関係は詳細に観察を行う。

次に、約3,000年前の地層と下位の地層との関係についても同様の観察・検討を行うためにトレンチの形状・規模・長さは求めるべき情報に留意して随時検討する。ここから得られる情報、得に地層傾斜の変化をボーリング資料と比較検討し活動履歴の解析を行う。