4−3 山形盆地断層帯

山辺町大寺地区で実施した地形地質精査,ボーリング調査,トレンチ調査,年代測定結果から、山形盆地断層帯のうち盆地南部の区間で活動時期、単位変位量、活動間隔、平均変位速度について以下の結果を得た。

最終活動時期は現在知り得る範囲で、トレンチ@におけるB2層(3,890±50y.B.P.)とB3層(4,400±60y.B.P.)の間に起った可能性が高い。これはトレンチAにおいてB2層(2,500±40y.B.P.)とC層(8,470±50y.B.P.〜10,080±40y.B.P.)の間に想定されるイベントもこの範囲内である。トレンチB−1)に見られるB層の年代から約2,500年前以降に断層活動があった可能性は低く、トレンチ@で求められた断層活動がこの地域における最終活動である可能性が高い。

単位変位量もしくは変位量は、トレンチ@では面沿いのずれ量は数10cmであるが、トレンチAではC1層の高度差から1万年前以降の変位量が2m以上,トレンチB−2)のC5層とトレンチB−3)のC1層もしくはC3層の高度差から1万年前以降の変位量が3m以上であることが明らかとなった。

活動間隔は単一のトレンチでは明らかにすることができないが、トレンチB−3)においてC1層(9,210±50y.B.P.)に見られる傾斜がB3層(9,180±40y.B.P.)には確認されないことから、この間に断層活動が起った可能性が考えられる。トレンチ@,Aではこの層準における断層活動を直接支持する現象は確認されていないが、トレンチAに見られる地層変形の層準はトレンチB−2),B−3)で検討されたイベント層準の範疇にあり、トレンチ@に見られるE層の変形や正断層も同様の層準で観察される。

平均変位量には上盤側の段丘面形成年代に仮定条件が含まれるために、不確定なものであるが、約17,000年前の地層の高度差から判断して、従来考えられてきた平均変位速度よりも大きな活動度を示す可能性が考えられる。 図4−3−1には大寺地区の調査によって明らかとなったイベント層準を示した。

山形市村木沢地区で実施した反射法探査の結果を図4−3−2に示した。このうち測線Aでは深度300mまでは比較的連続の良い反射面が確認され、深度800m程度は反射面の連続を確認することが可能である。表層部から深度300m前後では、反射面は500m程度の幅をもった褶曲構造を示しているように見られるが、このなかには明瞭は反射面の不連続は認められない。

より下位では反射面の連続を見るとCMP番号100を境界として、東側では反射面の連続が深度約900m付近まで連続するのに対し、これより西側では深度500m程度までしか連続しない。これは反射速度等から見て地下300〜800mに分布する地層が東側に向かって急激に地層層厚および下限深度を増しているものと考えられる。

測線Bでは深度500〜600m付近まで明瞭な反射面の連続を確認することができる。これらの反射面のうちCMP番号250付近より西側のものは測線Aの浅層部と同様に幅500〜400mの背斜構造を確認することができ、より下位には東傾斜の構造が読み取れる。これに対して、CMP番号150よりも東側では深度200〜300mの反射面には褶曲構造は全く見られず、わずかに東傾斜した構造が見られる。これより下位の深度200〜600mには、明瞭な反射面の連続が確認されこの層順には背斜構造が確認された。CMP番号160〜250の間には測線の東側もしくは西側に見られる反射面の連続が認められない区間が確認される。この境界をなす不連続線は表層でCMP番号160付近から西傾斜を示しているものと、CMP番号200から西傾斜を示すもの、250から東傾斜を示して深度150m付近に達するものとなっている。

ここで2条となっている不連続線(断層面)のうち東側のものは、断層西側に見られる褶曲した地層の連続を反射速度の比較から西側の不連続線(断層面)に比較すると大きな食い違い量を持たない可能性がある。従って、この地域の断層活動は西上がりの逆断層であるが、その角度は深部で低角化している可能性もある。また、その活動はB測線に現れる断層面に代表され、西側の山地には中新世の地層に大きな落差を持たせる断層が存在する可能性は少ない。A,B測線に現れる断層上盤側の褶曲構造は探査範囲において500m程度の幅をもって繰り返しており、この地域における構造運動が東西性の短縮を伴ったものであり、これが比較的新しい時代まで連続していた可能性も考えられる。