3−3−3 調査結果

ボーリング調査で得られたコア観察の結果からNo.1孔の深度5.55mまでの堆積物とNo.2孔に見られる深度4.70までの堆積物は層相がやや異なるものの、この地点の東側の沢から供給された沖積層の一部と考えられる。No.1孔の深度5.55m以下およびNo.2孔の深度14.50m以下はこの地域の東側の丘陵地を形成する鮮新世楯山層の泥岩・凝灰岩・礫岩と考えられる。No.2孔の深度4.70〜8.75mの角礫状シルトは、楯山層の泥岩が著しく風化したものか、破砕などによって風化が進んだものの可能性が考えられる。

No.2孔の深度8.75〜11.74Mの間は未固結の堆積物であり、上位のシルト層が泥岩の風化物などであるならば、この区間では泥岩が砂礫層などの堆積物に乗り上げる形状となっていることになる。また、深度11.74mから泥岩の上面までには泥岩と礫層の繰り返しが確認される。

No.3孔では深度3.63mもしくは4.15mまでの堆積物がNo.1,2孔に見られる沖積層と考えられ、この堆積物の基底面は緩やかな傾斜を示している。これに対して、No.3孔の深度11.78mから出現する礫層の堆積頂面はNo.2孔と対比すると上位の堆積面に対して明らかな急傾斜を示している。これはNo.2孔とNo3孔の間に礫層頂面に段差があるか、礫層の頂面が堆積後に傾動した可能性を示唆している。

No.4孔には、深度25m付近までは腐植層・シルト層が優勢となっており、下位は礫層が連続している。この礫層はNo.3孔の深度24.25mから出現する礫層に対比されるものと考えられ。この礫層の頂面にはほとんど高度差が見られない。従って、この地域における地層の変形はNo.3孔とNo.4の間ではほとんどなく、No.3孔付近で完了していると考えられる。

コア試料から得られた年代値によって、地層の対比および構造を検討すると、図3−3−3に示した地質断面が考えられる。No.2孔において1,480±80y.B.P.を示す地層はNo.1孔からNo.3孔にかけて連続するものと考えられる。No.3孔において6,500±130y.B.P.を示した地層の連続は不確実である。しかし、地層の層厚に大きな変化がないことから同等層が連続する可能性はある。

No.2孔では層相の変化から深度6.50m付近に断層(断層fa)を想定し、深度13.00〜14.22mには礫層と凝灰質泥岩の繰り返しから断層の存在が明らかとなった(断層fb)。ここで断層fa,fbの変位量はNo.2孔に見られる礫層が上盤で侵食されているため正確には解らないが、少なくとも8mを超えるものである。

これに加えてNo.3孔で得られた年代値から深度11.78〜16.28mに見られる砂礫層は深度24.45m以下に見られる砂礫層が断層によって乗り上げたための地層の繰り返しの可能性が考えられる。No.3孔およびNo.4孔の下部に見られる砂礫層は4万年前以前に堆積した可能性が高く、極めて厚い砂礫層であることから低位段丘T面堆積物に対比される砂礫層とされるが、ボーリング2地点間の分布高度はほぼ水平となっている。このことから上位を覆う約6,000〜7,000年前の地層の分布もほぼ水平であったとすると、この地層には6〜7mの高度差が認められ、低位段丘T面相当の礫層には12〜13mの高度差があることになり断層の存在が想定される(断層fc)。

No.1孔には下位の基盤岩中に70°程度の断層面が確認されたが、この上位を覆う堆積物の上面は耕作土・盛土を除くとNo.1孔とNo.2孔の間に崖地形は存在していない。また、堆積物の層厚に大きな変化がないと判断されるため、この断層面は完新世の地層を変形させていない可能性が高い。