3−2−5 調査結果

調査は極めてノイズの少ない条件でデータ取得が行われた。得られた探査結果は図3−2−7表層構造図),図3−2−8(重合断面図),図3−2−9(深度断面図),図3−2−10(マイグレーション断面図)に示した。

解析結果得られた解析断面を図3−2−11に示した。この測線ではCMP番号の深度200m付近からCMP番号の185付近〜CMP番号195付近に低角度の不連続線が明瞭に確認される。この不連続線は当初予測した松山断層の延長位置にあたり、この断層が地下深部から連続し表層まで連続するものと判断される。

また、この断層は澤,他(1997)のトレンチ調査で確認された完新世の地層を切る断層に連続するものである可能性が高い。これ以外の不連続線は丘陵地の沢沿いに延びた測線のCMP番号280付近に到達するものが考えられるが、上記に比べて不明瞭であり極表層部には水平に連続する反射面が見られるため、この地域で地表まで到達する断層面はCMP番号185〜195付近のものに限定される。

断層の上盤側では地層は西に向かって傾斜しておりより東側で急傾斜となる可能性もある。これに対して、断層下盤側では確認される反射面が深度1000mまでほとんど水平であり、変形や不連続は見られない。わずかに重合断面図にはCMP番号110〜230の1300〜1700msecに東傾斜の不明瞭な不連続線が確認されるにすぎず、マイグレーション後の深度断面では、この不連続線はほとんど確認できない。

今回の探査では平成9年に実施した酒田市生石測線での調査結果との対比から、庄内平野東縁断層北部の地下構造と南部にあたる松山断層付近の地下構造の比較検討を行った。生石測線では丘陵前縁に位置する観音寺断層の東側には明瞭な背斜構造といくつかの断層面が確認されたが、今回の調査では生石測線において大きく変形していた地層と対比される鮮新世〜更新世の地層にほとんど変形が見られない。

今回の測線の西側には更新世前期以前の地層が褶曲する丘陵地が存在するがこの構造は測線内には全く出現していない。このことは、丘陵を構成する背斜構造が極めて限られた範囲のものであり、同時にこの北部延長である生石付近の背斜構造は南に向かって規模が小さくなっており、変形の規模も縮小していることが考えられる。

これに対して酒田衝上断層の一部と考えられる松山断層では鮮新世の地層が更新世後期もしくは完新世の地層に乗り上げている可能性が高く断層面沿いの累積変位が極めて大きいと考えられる。また、解析断面に示された断層面はわずかな分岐が認められ、東側のものが澤、他(1997)に示された活断層に対応する可能性が高い。より平野側のものは澤、他(1996)に示された平野部の地形的傾斜変換部に対応する可能性がある。