(3)No.3孔(30m)

No.3孔は断層想定位置の下盤側で、空中写真判読から沖積低地の緩やかな傾斜が観察される地点において実施した。掘削深度は鈴木、他(1994)、澤、他(1997)などを参考にし30mとした。

<地層記載>

No.3孔では表層より深度0.71mまでが耕作による攪乱を受けているが、深度0.40〜0.49にかけて水田耕作に伴う土壌層が確認され、人工改変時に水田土壌の上に現在の耕作土が盛土された可能性がある。

耕作土の下位には0.71〜1.51mまでに弱腐植質のシルトもしくは薄い細粒砂層を挟むシルトが見られる。この下位は淘汰の良い細粒砂から中粒砂に変化し深度2.54〜3.17mには礫混じりの中〜粗粒砂が観察される。上位のシルト層中のラミナは10°程度の傾斜を確認することもでき、深度1.50付近には木片が点在する。

深度3.17〜7.10mはシルト優勢層で全体に弱い腐植質となっている。下部の6.30〜6.51には礫を含む中粒砂が見られ、7.25〜7.45には細粒の炭化物を含む中〜粗粒砂層が挟まれる。シルト優勢層の下部は下部ほど明瞭な腐植層となっており木片を含んでいる。

深度7.90〜10.40mまではシルト・細粒砂・中粒砂となり最下部に淘汰の良い厚さ20cmの粗粒砂がみられ、炭化物が部分的に点在する。深度10.40〜12.59mの間はシルト・細粒砂優勢となっており上部には炭化物の小片を含むラミナが見られる。また最下部は腐植質シルトとなり、深度12.59〜13.15mには木片を多量に含む黒色腐植層が見られる。

深度13.15〜16.15mにはラミナの発達する中〜細粒砂とシルト〜細粒砂が見られるが、深度13.70付近では細粒砂とシルトの境界が30〜50°の傾斜をもちこれに接するラミナに乱れが観察される。下部は中〜細粒砂優勢でシルトの薄層や炭化物の小片を含むラミナが見られる。

深度16.15〜16.50mには礫混じりシルト〜砂礫層が見られ、円礫優勢で最大礫径は70mmを超える。この直下には厚さ20cm程度の中粒砂層を挟んで2層の黒色腐植層が確認された。この下位17.60〜18.80m間はシルト層となっているが18.80〜19.78mの間にはやや厚い黒色腐植層が見られる。この腐植層の下部には多量の木片が含まれ深度19.70m付近には30〜40°の傾斜をもった境界面が存在する。

深度19.78〜21.75mは礫優勢層となっているがマトリックスはシルト質である。礫径は比較的大きいが円礫〜亜角礫が混在しており淘汰は悪い。深度21.75〜24.15mには細礫混じりの粗粒〜極粗粒砂が見られ、細礫が不明瞭なラミナを構成している。最下部には角礫を含むシルト混じり砂礫が見られる。

深度24.15〜24.90mにはラミナの発達する細粒砂が見られ、深度24.90〜27.12mには中粒砂の薄層を数枚挟む砂混じりシルト層が見られる。このシルト層の上部はやや腐植質となっている。深度27.12〜29.57mには塊状の粗粒砂層が見られる。砂層中には細礫がラミナを形成している。深度29.57〜30.00には弱い腐植質のラミナをもつシルト層が見られた。

No.3孔では完新世〜更新世後期の時代面の基準とするため4箇所の年代測定を行ったその結果深度6.80m付近の木片から5,360±70y.B.P.の年代値が得られ、深度12.59〜12.74mに見られる木片から6,760±70y.B.P.の年代値が得られた。深度16.50m付近の腐植層からは35,520±920y.B.P.の年代値が得られ、礫層の直上にあたる深度18.80〜19.78mの腐植層からは38,260±1,490y.B.P.の年代値が得られた。

No.3孔では地層の繰り返しなどは確認されていないが、No.2孔にみられた砂礫層とNo.3孔の砂礫層の間には地表で確認されるもの以上の高度差があり、これらの地層の変形の可能性が高い。また、深度13.70m付近に見られる傾斜した地層境界とその周辺のラミナの乱れは変形に伴う小断層の可能性もある。