(4)寒河江市−山形市村木沢地域

寒河江市付近は、山形盆地西縁の断層帯北部と南部が大きく雁行する位置にあたり、北部区間の南への延長は河北町慈恩寺付近に連続すると考えられる。これに対し南部区間の北への延長は寒河江市街地の東側に連続する崖地形と考えられる。この2つの断層が連続するものか、セグメントの分離が可能か、については活動時期が同一であるか否かが最も重要な確認事項であり今後の調査の課題である。

寒河江市の南で東西方向の流路となる最上川沿いでは比較的連続良く地層が確認できる(図5−3−37)。これらの地層から判断される地質構造は緩やかな背斜・向斜の繰り返しだけであり、地質分布に大きな不連続は見られない。このことから、山形盆地西縁断層帯の北部区間と南部区間は地表まで到達する断層面によって直接連続する可能性は低いと考えられる。

中山町−山辺町に至る地域では、寒河江市市街地の東側に見られる断層がより南部に向かって南北走向で連続していると考えられる。寒河江市高瀬山の北側では高速道路工事法面において段丘礫層やこれを覆う表層黒色腐植土を切る断層露頭が確認された(図5−3−39図5−3−40)。この露頭で観察される断層面は地形からみた連続の良い断層位置よりやや西側に位置する。露頭観察では、断層面沿いに複数のイベントは読み取れず累積変位の可能性が低いこと、断層面の東側100m付近では地層の著しい変形や急傾斜が確認されることからこの地域において繰り返し活動した活断層の主体はこの断層面確認位置よりも東側に位置すると考えられる。

しかし、この断層によって切られる表層の黒色腐植土の年代が、8,840±170y.B.P.,8,260±110y.B.P.を示すことから、この地域における断層の最終活動がこの時期以降に起ったととは確実となった。

山辺町大寺付近では断層露頭は確認されないものの、明瞭な変位地形がほぼ原地形のまま残されている区間が確認された。この地点で確認される変位地形の高度差は低位段丘U面では10m以上と見積もられる。この地点では地形面の形成時期を特定することはできないが、空中写真の判読からこの地点と対比される段丘面で採取した試料から17,550±110y.B.P.の年代値が得られた。このことから、この地区で見られる撓曲崖は低位段丘U面形成以降の変位を現わすものと考えられる。

山形市村木沢地域では、断層による変位地形と判断されるリニアメントが並列して観察される。このうち長岡付近では最も東側のリニアメントに対応する活断層露頭が確認された(図5−3−43)。この露頭では段丘礫層の基底が切られており、更新世後期の断層活動と判断される。また、この露頭上部では低位段丘T面の堆積物が撓曲していることも観察される。

村木沢若木地区では、河川に沿ってほぼ連続する露頭が200m区間にわたって観察されるが、この間で見られる地層は急傾斜を示し、より山側の地域では緩やかな傾斜に変化している。従って、この地区においても地層の急傾斜部の前面に活断層が連続すると考えられる。また、断層露頭確認位置付近では低位段丘T面とU面では変位量に差が見られ古い段丘面ほど変位量が大きくなっている。このことから、この地域でも断層は更新世後期において繰り返し活動を続けたものと判断される。