(2)遊佐町−松山町石名坂地域

地形的には、八幡町観音寺から酒田市生石においては山地と沖積面の間に低断層崖や扇状地の傾斜変換点が見られる。山地との境界に近い沖積面中にも弱い地形の変換点が見られるようであるが、人工的な地形改変が進んでおり断層崖を特定し断層位置を確定することは困難である。酒田市生石から松山町石名坂にかけては断層崖は不明瞭となる。

地質的には、基本的には下位より観音寺層・庄内層群下部層・庄内層群上部層が整合に堆積している。本調査地域では庄内層群下部層が広く分布し、西側より背斜・向斜・背斜との構造を示す。これは池辺ほか(1979)の平田背斜・一条向斜・観音寺背斜とそれぞれ対応する。観音寺層は観音寺背斜軸がカルミネーションとなる日向川〜荒瀬川付近にのみ露出する。八幡町の吉野沢付近では庄内層群や観音寺層の傾斜は低角であるが、常禅寺付近の庄内層群下部層との境界では南北走向で西傾斜60〜70°となる。調査地域の東側で観音寺層は酒田衝上断層群をなす断層によって庄内層群下部層と接している。庄内層群上部層は平田背斜の西翼のみにみられ、南北走向で傾斜は西傾斜約40°である。

鈴木ほか(1983)によるトレンチ調査の報告や反射法の結果を踏まえて、考えられる地質断面図を図5−3−1に示した。

段丘の年代としては、八幡町観音寺の露頭SLT59において低位段丘U堆積物から32,740±360y.B.P.のAMS年代測定結果を得ている。試料採取位置を露頭スケッチに入れ図5−3−2に示す。松山町石名坂の露頭SLT315で低位段丘U面より高い位置にある段丘堆積物から38,000y.B.P.を越えるβ線年代測定結果を得ている。露頭スケッチおよび試料採取位置を図5−3−3に示す。この段丘堆積物はきれいな段丘面を作らず、西に緩く傾斜している。松山町下餅山の農業用水路の工事露頭SKT116の沖積段丘堆積物より6,840±80y.B.P.のβ線年代測定結果を得ている。