(2)村山市長善寺−河北町西里地域

この地域では下流側で明瞭に分離されていた各段丘面の比高が小さくなっている。低位段丘T面の分布が広いのは樽石川と千座川の間でこれ以外は山地の縁辺部にわずかに分布するに過ぎない。これに対して低位段丘U面は分布・連続・保存状態も良い。

村山市北山付近や湯野沢、山口、河北町日和田付近には断辺的に高位段丘面、中位段丘面が分布している。河北町沢畑以南では山地と平地の境界付近には低位段丘U面が断辺的に分布し、ほとんどの地域で山地と沖積低地の境界には崖錐堆積物が分布するのみになる。

この地域では樽石の東約1km地点から村山市湯野沢を通り河北町弥勒寺にかけて低崖・断層崖、傾斜変換部、撓曲崖からなるリニアメントが連続する(YL−9)。このリニアメントでは、樽石川右岸の段丘に累積変位が認められ、低位段丘U面に明瞭な低崖が連続し更新世後期の活動がうかがえることからこの区間についてはAランクとした。この北側延長ではリニアメントとしての地形特徴が不明瞭となり、累積変位を明らかにできない区間についてはBランクとした。

湯野沢の東側には約1kmの傾斜変換部が見られる(YL−10)。累積性は明らかにできないが、低位段丘U面に連続しYL−9に収斂する可能性があるためBランクとした。河北町弥勒寺付近では並列する3条のリニアメントが観察される(YL−11,12,13)これらのリニアメントは崖錐地形や低位段丘U面を切る可能性がある。しかし、個々のリニアメントは連続性に乏しく変位量が小さい。また、累積変位を直接明らかにできないためBランクとした。

沢畑付近から河北町西里、日和田にかけての地域には山地と沖積地の境界に崖錐や低位段丘U面に低崖が連続し、山地境界も明瞭な崖地形を示している。西里から箕輪間では沖積低地に逆傾斜や低崖が観察され、極めて新しい断層活動が考えられることからAランクとした。

西里の西側山地にはやや湾曲したリニアメントが観察される(YL−15)。これは、鞍部・直線状の谷・谷壁・尾根の高度差などによって認識されるリニアメントである。この延長には更新世後期の地形面は分布していないため新期の活動や累積変位は明らかにできないためCランクとした。