(1)海老坂断層

富山県(1978)をはじめとする各文献では、海老坂峠を通る国道160号沿いに海老坂断層を推定し、藤井・竹村(1979)変位量は小さいながらも第四紀更新世西田層を切る断層露頭を確認し、竹村(1983)では高位段丘面を4m変位させる断層と記載している。

空中写真判読結果で認められたリニアメントの総延長は約1kmであり、延長4kmとする文献とは大きく食い違う。また、リニアメント付近及びその延長部でリニアメントを横断する海成面の分布高度や旧汀線高度はT面で約90〜100m、U面で約80m、W面で約40mであり、リニアメントを境にして両側の高度分布に差異(変位量の累積)は認められない。三角末端面様崖地形と平坦面の境は丘陵Tと丘陵Uが接する線でもあり、この地形が変動地形であるかどうかは疑問である。よって上記のリニアメントが海老坂断層の存在や活動を示唆する可能性は低いと考えられる。

既存ボーリング調査は、ボーリングの本数が少ないため詳細を論ずることはできなかったが、地層の大きな変形を示唆するようなデータは得られていない。

第四紀更新世の地層を切る断層露頭は確認されており、第四紀に活動したことに違いはないが、明瞭なリニアメントは判読できず、また周囲の地形面標高に有意な差異が認められない事などから、活断層であるとしても累積性に乏しく活動性の低い断層であると判断する。