3−3−2 子撫川以北の地域

ここに分布する地質を1/50,000石動図幅(1989)、藤井・小埜木(1967)の記載と比較し、対比すると下位より@沢川凝灰岩・砂岩・泥岩互層、A小野砂岩層、B高窪泥岩層、C頭川砂岩層、D大桑砂岩層、E埴生累層(石動砂泥互層相当層)となる。

なお、1/50,000石動図幅(1989)によると、ここで高窪泥岩層として示した地質は下位より音川累層の最下部泥岩層、島倉泥岩砂岩互層、西広谷砂岩層、下部泥岩層、浦田砂岩層及びその相当層、中部泥岩層(神代凝灰質砂岩層含む)、小久米砂岩層及びその相当層、上部泥岩層に細分されておりシルト質泥岩が過半を占めるとされている。しかし、踏査によれば細粒砂岩〜砂質シルト岩が卓越し、砂がちと判断され、石動図幅の様にシルト質泥岩を砂岩のはさみ層によって細分することは不可能と判断し、子撫川以南の音川累層であり、子撫川以南に分布し、岩相が類似している高窪泥岩層として一括した。

a)沢川凝灰岩・砂岩・泥岩互層

子撫川沿いの矢波周辺より奥にN65〜70゚E/60〜70゚Sをなして分布する。本互層は矢波周辺のO−1901B(写真3−3−39写真3−3−40)では白色軽石質凝灰岩・中〜粗粒凝灰質砂岩・泥岩ないしシルト岩の互層より成る。硬質であるが乾湿繰り返しにより1〜2p×2〜3p×3o程度の薄片に剥離しやすい。この薄片はこれらを傾斜不整合で水平に覆う湖成堆積物(埴生累層・石動砂泥互層相当層)中に多量に認められる。

b)小野砂岩層

成層した砂岩卓越の砂岩・偽礫を含む含礫砂質泥岩・泥岩互層であり、固結度が高い。本層の代表的層相は西明寺西方の土取場(S−3002:写真3−3−41写真3−3−42写真3−3−43)やその周辺(H−2808:写真3−3−44,H−2807:写真3−3−45,H−2806:写真3−3−46)で観察できる。

c)高窪泥岩層

細粒砂岩・砂質シルト岩が卓越する岩相であるが、シルト岩ないし泥岩をはさんだり(O−2804:写真3−3−47,O−2821:写真3−3−48,O−2822:写真3−3−49)、硬質のシルト岩・砂岩の薄互層(O−2817:写真3−3−50,O−2813:写真3−3−51)をなす部分もある。しかし、その連続を確認するには到っていない。細粒砂岩は固結度に差があり砂層状を呈する所もあるが、東に急傾斜していることで第四紀の砂層と区別できる。一部に軽石凝灰岩をはさむ(O−2814:写真3−3−52)が、その連続性は確認できなかった。

d)頭川砂岩層

本調査地に分布する頭川砂岩層は中粒砂岩(S−2812:写真3−3−53)ないし細礫混り中粒砂岩であり、貝化石を含みあるいはコキナ質となり硬く固結していることが多いが、ところによっては砂状(O−2808:写真3−3−54)を呈することもある。一部では白色細粒凝灰岩層を挟在(O−2810:写真3−3−55)し、ほぼ直立している。

平尾山東方の沢においてほぼ直立する頭川砂岩層の上位(東側)に大桑砂岩層下底部の凝灰質シルト岩、大桑砂岩層が分布することから、調査域においては、頭川砂岩層は大桑砂岩層の下位に位置することが明らかになった。

e)大桑砂岩層

基底部ないし下部に軽石質凝灰岩・凝灰質シルト岩からなる硬質の凝灰岩層が、子撫川右岸の横谷東方(S−2301:写真3−3−56)から法楽寺(S−2307:写真3−3−57写真3−3−58)・田川の谷(F−2908:写真3−3−59,F−2902:写真3−3−60)・小矢部市と福岡町境の谷に連続し、その北東方延長では硬質の凝灰質シルト岩となって上野・平尻山東方の谷へと続く。大桑砂岩層の典型的層相である細粒砂岩は、この凝灰岩層に沿ってその東側に露出し小矢部市・福岡町境の谷まで幅広く分布する。上野の北東端から平尻山東方の谷を経て上向田にかけて、及びその北東方の馬場・浅井神社にも大桑砂岩が露出し、頭川砂岩層分布地の東側に沿って分布することが確認できたので、大桑砂岩層が頭川砂岩層の上位に位置していることがより確実になった。

f)埴生累層(石動砂泥互層相当層)

法楽寺東方の土取場(K−2401:写真3−3−61写真3−3−62写真3−3−63写真3−3−64)において、東へ急斜する大桑砂岩層を削り込んでほぼ水平に砂礫から成る埴生累層が分布する。上位層準には有機質を含む黒色シルト〜細砂の薄互層が存在し、埴生累層堆積盆に侵食作用が働いた後、広い静水域化していった事を示唆している。この埴生累層について、埴生以南に分布する埴生累層の3部層の層相及び地質構造上の特徴の類似性を検討すると石動砂泥互層に対比される。K−2401露頭に分布する静水域の堆積層は子撫川沿いのほぼ同一標高の大桑砂岩層(凝灰岩)を傾斜不整合に覆うS−2307(写真3−3−57写真3−3−58),高窪泥岩層を傾斜不整合に覆うO−2410(写真3−3−65),O−2411(写真3−3−66写真3−3−67)、砂山砂岩層を傾斜不整合に覆うS−1841A(写真3−3−68)・S−1841B(写真3−3−69),O−2415(写真3−3−70)、沢川凝灰岩砂岩泥岩互層を傾斜不整合に覆うO−1901A(写真3−3−71写真3−3−72)の6露頭にも認められ、その静水域は子撫川下流を中心に広い範囲に存在していたと判断される。上野及び平尻山の東には、大桑砂岩層の凝灰質シルト岩を覆って埴生累層が分布すると推定される。しかし、上野の半島状丘陵の頂部に分布する薄層の砂礫層は本累層の構成メンバーの可能性もあるが、充填物が砂質であり、固結度がやや悪いので、U面群の砂礫層の可能性があると判断し、地質図上ではU面群を構成する砂礫層として図示した。

丘陵T内では唯一、尾根に緩傾斜で東へ傾く石動砂泥互層が分布(O−2827:写真3−3−73,O−2831:写真3−3−74)し、高角で東へ傾斜する高窪泥岩層を傾斜不整合に覆う。

また、浅井神社の谷奥のT面群分布地には、基盤の頭川砂岩層の開口部を細礫層が埋積している露頭(F−2808:写真3−3−75写真3−3−76)が存在する。この細礫層は静水域の堆積物と考えられること、表面に古赤色土壌が認められないことより地形面を構成する堆積物ではないと考えられ、また法楽寺東方の土取場の石動砂泥互層の分布高度の類似性や連続性そして周辺地質との関係から埴生累層(石動砂泥互層相当層)とした。よって、ここのT面群は、埴生累層(石動砂泥互層相当層)分布地に認められる小起伏面の一部と判断した。

なお、浅井神社周辺のF−2803(写真3−3−77)で頭川砂岩層を傾斜不整合に覆って分布する第四系は層相の類似性から、埴生累層(石動砂泥互層相当層)と判断した。

g)地形面構成層

g−1)T面群構成層

T面群で唯一確認されたF−2808露頭(写真3−3−75写真3−3−76)の堆積物は、上記の通り埴生累層(石動砂泥互層相当層)と判断された。

g−2)U面群構成層

U面群構成層として典型的な堆積物はO−2404(写真3−3−78写真3−3−79)に認められる円礫層である。

なお、上野及び平尻山東方の円礫層は前述の理由により、U面群構成層とした。

g−3)V面群構成層

空中写真判読で識別できたV面群の分布はせまく、V面群構成層は露頭が無く確認できていない。V面群のほとんどはW面群構成層下に埋没していると判断される。

g−4)W面群構成層

最も低い低平な面を形成する堆積物であるが、W面群構成層は露頭が無く確認できない。