(2)地形面区分

上述の丘陵T・U、台地及び平地に認められる地形面を高位より、T〜[面に区分した。開析程度からT〜V面は高位段丘面群、W・X面は中位段丘面群に相当すると考える。

a.T面

丘陵Tの北縁から東縁及び南縁にかけての斜面に島状に分布し、丘陵Uの東縁(丘陵Tとの接触部)にも局所的かつ島状に分布し、標高90〜100mを示す。各分布地は海側に向かって緩やかに傾斜している。面は開析されて小起伏面状を呈しているが、一部で平坦面を残し、一部に旧汀線と見なされるやや明瞭な傾斜変換線が認められる。

b.U面

T面より約20m低い地形面として認められ、丘陵Tの北縁から東縁に島状に分布するほか、丘陵Uの北縁と南縁にも局所的に分布する。標高約70〜80mを示し、海側に向かって緩やかに傾斜している。面は開析されて小起伏面状を呈しているが、一部で平坦面を残しており、T面とは旧汀線又は旧汀線が開析されたと判断できる急斜面を以て接する。

c.V面

U面より約20m低い地形面として認められ、丘陵Tの北東縁にU面を取り巻き島状に分布する。標高約60mを示し、海側に緩く傾斜している。分布面積が小さいため面の開析程度は把握できないが、概ね平坦である。U面とは旧汀線と見なされる傾斜変換線で接する。

d.W面

台地に広く分布するほか、丘陵T・Uの南縁斜面に島状に分布する。台地に分布するW面は標高約40mの旧汀線を持ち、海側に向かって緩やかに傾斜し、面の末端では標高約20mとなる。丘陵Tの南縁に当たる丘陵斜面に分布するW面は標高約50〜60mに旧汀線が開析されたと判断できる急斜面を持ち、海側に緩く傾斜して分布している。台地上のW面は概ね平坦であるが、樹枝状に入り込んだ沢によって開析され、一部で小起伏面状を呈している。丘陵斜面に分布するW面は開析され、小起伏面状を呈して島状に分布している。分布標高から見てW面はT・U・V面とは急傾斜の丘陵斜面を以て明瞭に区分できる。W面は富山県(1992)の中位段丘に、北陸第四紀研究グループ(1963)の地形面Ubに相当する。

e.X面

丘陵T・Uの南縁部にW面に接して島状に分布する。分布高度は標高約30〜50mである。分布面積が小さいため面の開析程度は把握しにくいが概ね平坦である。W面とは急斜面を以て接するが、分布標高はW面の分布範囲に納まっている。丘陵T・Uの南縁部に張り付く分布形態と、分布高度がY面とほとんど同じことから、Y面とほぼ同一時期に形成されたと推定した。

f.Y面

Y面は丘陵T・U及び台地を刻む埋積谷の奥部とその支沢に分布している。分布高度は埋積谷の最奥部で標高約50mに達する。面は平坦であるが、下流側に向かって緩く傾斜し、Z面との接触部は傾斜変換線又は小段差をなしている。X面との関係を示すところはないが、分布高度からX面を形成した海進により谷の奥まで埋積してできた面の残留したものであると推定した。

g.Z面

Z面は丘陵T・U及び台地を刻む埋積谷と、それに連続する周辺の平地に分布する。分布高度は埋積谷のY面との境界部の標高約15〜20mを最高に、海側に向かって緩やかに高度を減じ、有磯海の海岸付近では標高5m未満になる。面は極めて平坦であるが、一部で小河川によって開析されている。

i.[面

[面は最も若い面で小矢部川沿い及び、埋積谷や海岸沿いに分布し、Z面を開析して、河成堆積物の堆積により形成された面と推定する。分布高度は埋積谷内部で標高10m前後、小矢部川沿いでは5m以下である。小矢部川沿いの[面はZ面を削剥・埋積して形成された氾濫源と考えられる。埋積谷中のZ面を小河川が開析してできた[面は、小矢部川の氾濫源の[面に連続することから、埋積谷中の[面と小矢部川沿いの[面とは同時期の河成面と認定した。面は極めて平坦である。Z面とは丘陵T・Uの南縁部で急崖(侵食崖)を以て接するが、伏木港付近では境界は不明瞭になる。