(1)イベント時期

 法林寺断層の1トレンチ、3ピットの調査から得られた5万年から現在までのイベント発生時期を図6.1.1にまとめた。

 図中イベント発生推定期間を短形で表示し、中線を描いたところは地層の連続的な堆積が確認されているところである。この間は、少なくともイベントは存在しない区間である。一方、破線の短形で表示したところは地層の欠如等によるイベント情報の得られない期間を示している。数値は短形の左が炭素同位体年代法にもとづく暦年未補正値、右の数値が暦年補正値である。暦年補正値については、2万年よりも古い年代のものについては、補正値が認知されていないことから表記しなかった。

 各トレンチ、ピットで読んだイベントは、断層との関係が確認できるもの、イベント境界が傾斜不整合にあり、構造差がかなりあるもの、傾斜不整合にあるものに区別し、ランク分けしている。

 最新イベントは、同位置トレンチ、あるいはピットで確認することはできなかったが、間接的に安居西地区において、6,520yrCalBPの地層が傾動していることから、これ以降、安居東地区、岩木地区において、それぞれ、2,753CalyrBP,4,960CalyrBPの地層が変位・変形を受けていないことからこれ以前と判断できる。即ち、法林寺断層の最新イベントは、6,520CalyrBP〜4,860CalyrBPとなる。

 再来間隔については、イベントに関する情報の得られている法林寺地区と安居西地区の結果から、それぞれ年代範囲は得られているものの、そのどこで発生したかを示す情報はない。そこで、再来間隔の取りうる最大、最小、およびイベント時期の年代範囲の中間値から得られる再来間隔の平均を、それぞれ計算すると下記のようになる。

 年代値については、2万年以前の暦年補正値がないため、計算はすべて暦年未補正値で計算しているが、平均再来間隔に関しては参考データとして北川(1999)の炭素14年代キャリブレーションカーブを使って概略(計算式がないため曲線を適正曲線に当てはめて計算)を算出した。

最 大:法林寺地区のイベント4の43,610yrBP以降、岩木地区の4,860yrBP以前にイベント7回となる。ただし、イベントが確実なものだけとし、安居西のイベント2をはずした場合、法林寺地区のイベント4の43,610yrBP以降、岩木地区の4,860yrBP以前イベント6回となる。

イベント2を入れた場合:(43,610−4,320)/6=6,458年

イベント2をはずした場合:(43,610−4,320)/5=7,750年

最 小:法林寺地区のイベント4の31,440yrBP以降、安居西地区のイベント1の  5,750yrBP以前にイベント7回となる。ただし、安居西のイベント2をはずした場合、法林寺地区のイベント4の31,440yrBP以降、安居西のイベント1の5,750yrBP以前にイベント6回となる。

イベント2を入れた場合:(31,140−5,750)/6=4,282年

イベント2をはずした場合:(31,140−5,750)/5=5,138年

平 均: 両地区から得られるイベントの中間値は、下記のとおりであり、法林寺地区のイベント1と安居西のイベント4とが同一イベントであると見なし、中間値は両者を併せた範囲の中間値 をとった。

即ち、43,610yrBP〜7,360yrBP間に

法林寺:イベント2の中間値:26,820yrBP

    イベント3の中間値:29,800yrBP

    イベント4の中間値:37,525yrBP

安居西:イベント2の中間値: 9,620yrBP

    イベント3の中間値:11,870yrBP  及び

法林寺のイベント1と安居西のイベント4を同一のイベントとした時の年代範囲の中間値18,798yrBP、最新イベントの中間値5,305yrBP、以上の計7回のイベントの年代値から、平均再来間隔は5,370年を得る。安居西のイベント2(9,620yrBP)を除外すると平均再来間隔は、6,444年となる。

同様の計算を暦年補正値で計算すると

法林寺:イベント2の中間値:30,000CalyrBP

    イベント3の中間値:32,500CalyrBP

    イベント4の中間値:40,100CalyrBP

安居西:イベント2の中間値:11,059CalyrBP

    イベント3の中間値:13,933CalyrBP  及び

法林寺のイベント1と安居西のイベント4とを併せた年代範囲の中間値 

22,200CalyrBP、最新イベントの 5,690CalyrBP から安居西のイベント2を入れた場合、平均再来間隔は、5,735年。ここで、安居西のイベント2を除外すると6,882年となる。

 以上の計算から、平均再来間隔は、5,370−6,444年(暦年計算値:5,735−6882年)となる。ただし、この計算はイベント境界で読んだイベントを1回として計算しており、これ以外の活動が捕捉されていない可能性があり、場合によっては、平均再来間隔はこれよりも短くなる可能性がある。

 以上の検討から、平均的な再来間隔は、およそ5〜6千年程度と判断される。