(1)地形・地質概要、調査目的・調査経緯

 当地区は、高清水断層北部に位置し、庄川の扇状地の出口と断層が交差する井波市街地に位置する。高清水断層は図5.2.3.1に示すように、山際の断層と井波市街中央を北北東−南南西にのびる断層、及びその街西縁に南北にのびる3本の断層に枝分かれしている。山際の断層は低位段丘III面に変位を与えており、西縁の断層は低位段丘IV面に変位を与えている。街中央の断層は低位段丘V面にまで変位を与えており、それより新しい段丘面との関係は不明である。平成10年度の地表調査においては、山際の断層による低位段丘III面の変位30mとその年代値約4万年前から断層の平均変位速度を0.75m/千年、街中央部の断層による低位段丘IV面の変位量約5mとその年代値約2万年前から平均変位速度を0.25m/千年という概略値を得ている。

 しかし市街地は区画整理後、地形改変が進んでいること、また低位段丘V面については変位量が小さいことから、その正確な値が求まっていない。

 そこで、市街地の低位段丘IV面・V面の鉛直変位量をより正確に求めるため、断層両側の水田の標高測量を実施することとした。水田自体も区画整理以降、原地形標高そのものを反映しないと予想されるが、切土・盛土による変位基準面の平均的な地形勾配が大きく変わることはないため、断層片幅約500mまで範囲を広げて行った。