(1)地形・地質概要

 当地区は、山から東方へ流下する古谷川出口と北北東−南南西走向に延びる断層とがぶつかる位置に相当する。法林寺付近や川西付近では、西側の丘陵地と平地の境界付近に幅50〜100m程度の第三紀層の急傾斜帯が確認され、その傾斜は西側の山麓境界向かって次第に緩くなっている。当地区古谷川の河床露頭においては、蔵原砂岩層が最も急傾斜しているのは、山麓境界よりも約100m東方平野側の地点である。また、川出口周辺に発達する段丘面もこの付近で変位・変形しており、断層の主たる活動の位置は、山麓境界よりも100m前後東に位置するものと考えられる。昨年の法林寺地区の反射法探査の結果からも、断層位置はこの急傾斜帯のすぐ東側の道路(福野−福光線)下付近に存在するという結果を得ている。

 図5.1.4.1に、法林寺地区の地形区分図を示す。古谷川沿いの段丘面を上位のものから低位段丘III面、低位段丘IV面、低位段丘IV’面、低位段丘IV’’面、低位段丘V面とに区分した。変位地形から読みとれる、やや明瞭な連続性の良い断層崖は、当地域中央の延びる北北東−南南西の1本とその東の当地域南縁の低位段丘IV面上の計2本である。地層の急傾斜帯は、中央に延びる断層崖よりは東に位置することから、主断層は、この断層崖よりも東にある。

 図5.1.4.2に、予想される断層両側の段丘面高度を比較するため、B点からの水田の比高値を平面上に示し、図5.1.4.3に、それを古谷川沿いの河床縦断面図(A−A’)に投影した。当地区は区画整理後、地形改変が進んでおり、原地形を残していない可能性はあるが、明らかに切土、盛土したと推定できるものについては補正している(破線→実線)。推定断層位置両側で水田の高さに明瞭な差は見られないが、各段丘面ごとに水田の法肩をつないだ接線を平均的な段丘面勾配と見なし、それについて検討した。

 図5.1.4.3中、L3から東方平野側L1の手前までは、低位段丘IV、IV’面は、現河床よりも傾斜が急となっており、上位のものほど急傾斜している。一方、L1よりも平野側(東側)については、データ数は少ないが、それらは、現河床勾配とさほど傾斜に違いはない。すなわち、L1を境として段丘面勾配が変わっているように見える。後で述べるように、反射法探査やボーリング・トレンチ調査から推定した断層はこのL1と一致する。一方、低位段丘V面の勾配は、現河床勾配と変わりない。

 段丘面形成時の河床勾配が現河床勾配と同じという保障はないが、もし、さほど違いがなかったとすれば、L1よりも山側(西側)で、西上がりの傾動運動が低位段丘IV面形成以降、低位段丘V面形成よりも前に起こっていたものと考えられる。