(4)ピット・ボーリングからイベント時期の検討

 ピット内で、B層は幅2m前後しかその連続性が確認できなかったが、B層観察地点は、断層から10m前後と非常に近い位置にあるにもかかわらず、変形していない。観察範囲が狭いことから、B層が断層をまたいで上下盤側の広い範囲においても連続的に堆積、分布しているかどうかを確認するため、ピット西側(上盤)で1本、東側(下盤)で2本ボーリングを実施した(図5.1.3.3, 図5.1.3.5)。

 ピットとボーリングとの地質対比をボーリング地質柱状解釈一覧表(巻末資料)に示す。

 ピットで確認したB層(灰色砂層)と同じ特徴を持つ砂層が観察されたのは、No.1孔の深度2.9〜3.9m、No.2孔の深度1.0〜1.9m間、No.3孔の深度0.88〜1.80m間の3箇所である。B層がもし、変位・変形していなければ、低位段丘V’面の堆積頂面とほぼ同傾斜していると考えられる。

 低位段丘V’面の堆積頂面の傾斜は、地形改変が進んでいるため、正確に把握できないが、低位段丘V’面の山際扇頂部付近からピット地点を通って北東に抜けるB−B’断面(図5.1.3.5右下)を概略地形図から作成した結果、2°前後で下流方向に傾斜していると思われる。ピット内のB層を2°傾斜で傾斜を延ばすとNo.2孔の砂層に連続する。No.1孔、No.3孔の砂層は、B層よりも下位に位置することが予想され、断層との関係は不明である。No.2孔にNo.3孔の砂層に相当する砂層が存在しない理由は、No.2孔が、支沢の旧河道からややはずれた位置にあるためと思われる。この地層対比が正しいとすれば、断層は、No.2孔とピットとの間にあるため、B層は断層によって変位していない可能性が高い。年代結果と併せて検討する。