(6)地質構造解析

 安居東地区、安居西地区の調査結果と極浅層反射法探査の結果を併せて、当地区の地質構造解析を行った。図5.1.2.9は、当地区の極反射法探査断面を図5.1.1.1のB−B’断面に投影したものである。起点からの距離が50〜170m付近には、深度20〜10mの位置に明瞭な反射面が見られる。この反射面は、東縁(起点から50m)では、安居東のピット下で確認した砂質泥岩(基盤)上面の深度と一致する。断層は、おそらく起点から50mの深度20m付近から西傾斜しているものと思われる。

 起点から150〜170m(深度10m)の反射面は、それより西方には連続せず、起点から170〜200mでは、深度20mに落ち込んでいる。このことから、起点から170m付近に、東に30°前後傾斜する逆断層(バックスラスト)が存在する可能性がある。逆断層の地表延長は、安居西のピットに相当するが、ピット内には東傾斜の逆断層は存在しない。しかし、バックスラストによる基盤直上の堆積物は10m程度鉛直変位しているものと見られ、地表近くのピット付近では変位はないとしても、かなり撓曲していることが予想される。起点から50〜170m間の基盤上面に大きな変形がない点、1989年の道路法面の写真では、ピットから20m東方(起点から150m)付近までの堆積物はほぼ水平かわずかに東傾斜であることから、ピット内の局所的な地層の急傾斜は、背斜(バルジ)構造の一部というよりは、バックスラストの動きに伴って形成された可能性が高い(図5.1.2.9の下図)。

 図5.1.2.10には、安居東、安居西のピット、ボーリング調査結果および、反射法探査断面の結果から推定したAT(姶良火山灰)降灰以降の地質構造発達史の概念図を示した。安居西地区においては、AT直下の粘土層が急傾斜し、急傾斜させたイベント(イベント4)が22,510−12,580yrBPであるので、遅くともそのころからバックスラストの活動はあったと推定される。D’層よりも上位の堆積物は、山側からの支流性の堆積物であり、もともとは、東方へ緩く傾斜していたものが、東方の主断層の活動と連動したバックスラストの活動に伴い、西方へ次々に傾動が累積していったと考えられる。

 一方、安居東地区では、小矢部川の本流性の堆積物の堆積と断層活動とが繰り返され、現在断層は、約2,610年以降堆積した堆積物下に伏在しているものと見ることができる。