(a)地質・層序
ピット(1)内には、当初予想した崖下には断層は見られず、基盤岩と思われる砂質泥岩(埴生累層相当層:E層)、および固結した砂礫層(D層)にC1層(未固結の砂礫層)以上がアバットしている(図5.1.1.4)。C1層は低崖と低崖から東へ7mの区間は、10〜20°前後で西へ傾斜しているように見えるが、低崖がかつての小矢部川の河川流路の攻撃斜面に相当していたとすれば、低崖方向に堆積頂面が傾斜していることもあり得る。それより東方平野側では、C1層、B2層、B1層はいずれも水平であり、追加掘削を行ったピット(2)においても構造運動を示唆するような地層の傾動、変形等を確認することはできなかった(付図参照)。したがって、少なくともC1以上の地層は、崖からピット(2)の東縁までの約40m間、断層による変位・変形は受けていない。
ピット内で確認された地層を不整合、削り込みを基準に上位からA層〜E層に区分した。また、各層について、層相の変化が見られる場合には、それぞれを細分した。
以下にピットで確認された地層の層相の特徴を示す。
<A 層>
現在の耕作土および盛土、及び表土(腐植土)である。一部崖上からの崩れと思われる崩落性の堆積物を含む。
<B 層>
上位からB1層、B2層、B3層とに区分した。
B1層は、黒色〜暗灰色腐植土からなり、B2層は、灰色シルト混じり砂層であり、いずれも当地区崖下に広く分布する。
B2層は、ラミナの発達する細〜極細粒砂であり、崖下でやや厚く(20〜30cm)堆積している。
B3層は上位(B3−1)と下位(B3−2)とに細分した。いずれも砂礫主体層であり、数cm〜20cmの雑多な亜円礫、砂、シルトからなり、本流堆積物である。B3−1は、崖近くで礫の向きが崖の傾斜に平行となり、B3−2に比べると基質に細粒分を含み、淘汰が悪い等から、崖錐性堆積物と思われる。B3−2は崖近くでC1層を削り込んでおり、D層にアバットしている。
<C1層>
数〜20cmの雑多な亜円礫、砂、シルトからなる砂礫層である。上部に厚さ20〜30cmのラミナの発達する砂層を挟む。
<D 層>
低崖を構成しており、ピット西側側壁に見られる。砂岩、チャート、泥岩、安山岩等雑多な礫を含む砂礫層である。B層、C層と比べると基質は固結しており、下位の砂質泥岩を削り込んでいる。
<E 層>
固結した灰色砂質泥岩。低崖下、地表から深度2mの位置に狭小に分布する。埋め戻し直前に崖下をさらに1m掘削したところ、E層は、崖下から東方平野側にはりだしているのを2m確認した(図5.1.1.2)。
(b)最新イベントの検討
当地区では、ピット掘削によって断層と被覆層との関係を明らかにし最新イベントを決定することができなかった。そこで、まず断層位置を確認するために低崖下で2本のボーリングを実施した。断層崖は、C1層以上の本流堆積物によって山側(西側)へ追い込まれ、現在の位置にあることから、東方平野部のどこかに断層がC1層の下に伏在していることが予想された。崖下より平野側2mまでは、ピット内で上盤側のE層(基盤)を確認していることから、さらに2〜3m程度は東方までE層がつづいた後、断層を介してどこかで下盤側の砂礫に変わるものと予想した。
このため、まず、断層の有無とその位置を確認するため、低崖下から3m東方平野側でボーリング(No.1孔)を実施し、E層(基盤)が抜けて落下側の砂礫が現れるかどうかを調査した。図5.1.1.5に示すように、No.1孔では、深度3.1mで砂質泥岩(E層)が現れ、深度4mまで続いた後、砂礫にかわっている。このことから、断層は、深度4mの位置にあり、山側へ傾斜しているものと推定した。
さらに、No.1孔から東方へ3m離した位置でボーリング(No.2孔)を行った結果、E層は現れないことがわかった。
図5.1.1.6にNo.1孔とNo.2孔の深度2.6mから4.5m間のボーリングコアの対比の解釈を示す。No.2孔のC2層とした細粒砂〜シルトは、No.1孔のE層の直下(深度4.00〜4.25m)に見られるものの、直上には存在しない。このことから、おそらく断層は、C2層以下およびC1層の途中までには変位を与えているが、その直上のC1層上部には変位を与えていないものと考えられる。
以上のことから最新イベントは、C2層の堆積後、C1層の堆積前あるいは堆積中と推定される。