(2)<高清水測線>

(1)オリジナル波形

図3−2−19−1図3−2−19−2に発震点0,40,80,120,160,200のオリジナルデータ波形例を示す。なお、オリジナル記録は、磁気テープにSEG−Yフォーマットにて収録したものを付録として提出する。オリジナル波形では、測線全般に往復時間400msec程度まで反射波イベントが認められる。測点160番付近で高圧線が横切っており、この付近の受振器による記録は影響を受けている。

(2)フィルター処理

図3−2−20に屈折走時より求めた静補正量を示す。最終データムは250mとした。下位に示したものが、CDP重合前に補正した表層(低速度層)部での伝播時間に相当する量であり、上位に示したものが、最終データムまで補正する際の補正量である。全体的には測線下の低速度層は薄かったものと考えられ、補正量は比較的小さい。しかし、測線終端(測点200番以降)では補正量が大きくなっている。

図3−2−21−1図3−2−21−2には発震点0,40,80,120,160,200の静補正およびバンドパスフィルター処理、AGC処理まで行った結果の記録例を示す。バンドパスフィルターの通過周波数帯域は20〜100Hzとした。またAGC処理のオペレータ長は300msecとしたこのバンドパスフィルターによって、表面波ノイズが軽減された。

図3−2−22−1図3−2−22−2には、発震点0,80のスパイキングデコンボリューションのテストの結果を示す。デコンボリューションテストにおいてはオペレータ長を40msec,80msec,120msecと変えて、それぞれの結果を比較した。ノイズは0.1%とした。この結果オペレーター長は80msecが最適であると判断された。

図3−2−23−1図3−2−23−2にはデコンボリューション処理まで行った結果の記録例を示す。デコンボリューションには、スパイキングデコンボリューションを用いた。このデコンボリューションのオペレータ長は、デコンボリューションテストで最適と判断した80ms、ノイズは0.1%とした。このデコンボリューション処理によって、表面波ノイズがさらに軽減され、また各反射波が孤立したイベントとして認められるようになった。

(3)速度解析・CDPスタック

各種フィルター処理(前処理)を施した結果について速度解析を行った。

図3−2−24に速度解析により求めた速度テーブルを示す。CDPスタックはこの速度テーブルを用いて行った。速度解析によると、測線全般では、往復時間200msec程度まではおおむね1800〜2000m/secの速度を示す。これより下位の往復時間300msec付近では2500m/secを示しており、測線前半の往復時間400msecより深くでは3200m/secとなるところもある。また、CDP360〜390にかけては、特異的に高い速度を示し、表層付近から2500m/secを示し、往復時間300msecぐらいより3500m/secを越えている。

(4)スタック後処理、深度変換

マイグレーションで用いる速度テーブルは、急な速度変化が無いことが望ましい。したがって、速度解析で求まった速度テーブルにスムージング処理したものをマイグレーション処理に用いた。図3−2−25にはマイグレーションに用いた速度テーブルを示す。

深度変換には、同図に示すスムージングした速度テーブルを用いて静補正量も考慮して作成した速度テーブルを用いた。この速度テーブルを図3−2−26に示す。

解析成果として以下の図を示す。

図3−2−27 時間断面(CDPスタック結果)

図3−2−28 マイグレーション後時間断面

図3−2−29 深度断面

図3−2−30 マイグレーション後深度断面

図3−2−31 カラー断面(マイグレーション後深度断面)

マイグレーション後の深度断面について所見は以下のとおりである。

大きな特徴として、CDP250付近を境とし、測線起点側には多数の反射面が分布しており、終点側では深度の浅いところにしか反射面がみられていない。逆断層の下盤側から探査を行った場合の典型的なパターンを示している。

測線起点側では、標高100〜−100m(深度0〜200m)付近にかけて、何枚かの反射面が見られる。特に標高50m付近の反射面が顕著であるが、この反射面はCDP260番付近で途切れる。標高−100〜−300mにかけて、顕著な反射面は得られていない。標高−400〜−550m付近にふたたび顕著で連続性の良い反射面が現れる。この反射面(反射波)はCDP210番付近より不明瞭となり、CDP260番付近よりせりあがるような形となり、CDP320番付近で途切れている。なおこの測線の場合、このせり上がるような形態は、マイグレーション前の断面ではあまり明瞭ではないことより、マイグレーション処理の影響による偽像であることも考えられる。

測線後半のCDP270番から360番にかけては、深度100m程度までに若干測線終点側(南)へ傾斜しているとみられる反射面が分布している。これらより下位の深度200m付近に、高い速度で重合される周波数の高い反射波を速度解析の段階では認めることができたが(図3−2−25参照)、その後の処理によってあまり顕著でなくなっている。一方、CDP400番を中心に深度50mから250mにかけて低い速度で重合される低い周波数の反射波が見られる。これらは、表層付近でトラップされた多重反射の波である可能性がある。CDP425番以降では、深度80m付近まで数枚の反射面が見られる。