(1)<法林寺断層>

断層の分布:小矢部川の左岸側に沿って、小矢部市安養寺付近から福野町安居、福光町法林寺を経て福光町香城寺に至る。走向:北北東−南南西方向。

活動の形態:山地/平野の地形境界付近、平野側の低位段丘面及び扇状地上に、低断層崖、小地塁、小地溝、撓曲崖などの断層変位地形が連続して分布。

活動履歴:平均変位速度、最新活動時期、再来間隔などは不明

・安居地区では、山地/平野境界よりも平野側に撓曲と逆断層を示唆する低断層崖および断層露頭(道路改良工事時の工事写真で確認:現在はブロック積み擁壁工により観察できない)が存在する。いずれの断層も低位段丘W面に変位を与えている。

・福光町法林寺地区では、断層により第四紀更新世後期の低位段丘W面が変位、変形を受けている。

・法林寺地区周辺の露頭(上盤側)で基盤が緩〜急傾斜(一部逆転)している。

小矢部川団研グループ(1974)や竹村(1983)は、福光町法林寺などで埴生累層中ないし段丘堆積物を切る小断層の存在や変形構造を指摘しているが、主断層の位置及び構造は把握されていない。また、寒川(1992,1997)は安居大堤窯跡群の逆断層について1586年の天正地震によるものとしているが、東側隆起であり、現在考えられている西側隆起の逆断層という構造と一致しない。

空中写真判読において、中位〜低位段丘面と考えられている地形面に、撓曲様地形・低断層崖様地形・溝状凹地様地形などの多くの変位地形が認められた。

地表踏査においては断層露頭は見つからなかった。

福野町教育委員会 林 浩明氏によれば、1989年末に前述の安居大堤窯跡群発掘の際に、同じ安居地内で段丘面を削る道路造成工事が行われており、切取法面に断層露頭が露出していたとの事である。この露頭は前述の空中写真判読結果の溝状凹地様地形の中に位置する。したがって、これらの地形は法林寺断層の活動の影響による変位地形である可能性が高い。

これらの地形面は、年代を決めるような火山灰や木片試料などが採取できなかったため、地形面の形成年代の詳細は不明であるが、地形学的に低位段丘面と考えられ、これらの地形面に変位が認められることから、法林寺断層は比較的活動的な活断層であると考えられる。

<高清水断層>

断層の分布:砺波平野の南東縁に沿って、庄川町の庄川左岸から、井波町中心部、連代寺、清玄寺、井口町川上中、城端町西明、蓑谷を経て、大谷島付近に至る。走向:北東−南西方向。(ただし、庄川町以北については、断層変位地形が庄川の侵食で失われている可能性があり、断層変位地形が認められないといえども、断層が連続していないとは判断できない。)

活動の形態:山地/平野の地形境界、平野側の扇状地性の低位段丘面上に低断層崖が連続して分布。またこの低断層崖から0.5〜1km平野側にも一部に低断層崖が見られる。山地側には、更新統を切る東落ちの正断層が見られる。

反射法弾性波探査の結果では、地表の変位地形や地質境界に対応する逆断層が認められる。ただし法林寺断層のような落差の大きな断層は存在しない。

活動履歴:2つの低い段丘面の変位量から下記の平均変位速度が得られている。

低位段丘W面構成層にAT火山灰(約2.4万年前)を挟む。

変位量約5m 平均変位速度 0.25m/千年

低位段丘V面構成層にDKP火山灰(約4.6万年前)を挟む。

変位量約30m 平均変位速度 0.75m/千年

最新活動時期、再来間隔などは不明。

・井波町、井口村の数ヶ所で断層露頭が確認されている。井口村の赤祖父溜池付近では、基盤の安山岩が第四紀更新世の砂礫層へ衝上しているが、低位段丘V面(DKPの面)に変位を与えておらず、平野部の断層と比べると最近の活動の痕跡は見られない。

・清玄寺地区の平野部では、第四紀更新世後期の低位段丘W面(ATの面)まで断層により変位、変形を受けており、西明地区でも、低位段丘W面まで変形を受けている。

・井口蛇喰付近の数ヶ所の低位段丘W面構成層からAT(約2.4万年前の火山灰層)を、庄川町金屋付近の低位段丘V面構成層からDKP(約4.6万年前の火山灰層)が確認された。断層崖による高度差が、それぞれ5m程度、30m程度であることから、低位段丘W面構成層を使うと平均変位速度は、0.25m/千年、低位段丘V面構成層を使うと、0.75m/千年になる。