(2)高清水断層

<地質各説>

・岩稲累層

5万分の1地質図幅「城端」(井上ほか,1964)によれば、本累層は庄川と礪波平野の間の山地を形成するものであり、安山岩の溶岩・凝灰角礫岩・火山円礫岩・凝灰岩からなるとされる。調査地域では高清水断層の南東側に分布しており、確認された限りでは、安山岩の角礫を含む凝灰角礫岩が優勢であり一部で安山岩溶岩も確認された。

・医王山火山岩層

井上、他(1964)によれば、おもに流紋岩およびそれらの凝灰角礫岩からなるとされ、高清水断層に沿った丘陵地に分布するとされる。調査地域で確認された本層は、凝灰質砂岩・泥岩や円礫を混じりの礫岩〜凝灰角礫岩の互層となっている場合が多い。しかし、含まれる礫および角礫には安山岩起源のものが比較的多い。

・高位段丘面堆積物

高清水断層の連続する庄川町から城端町の南東側の丘陵地には、高位段丘の分布がしられいる。しかし、この段丘面の分布は極めて断片的であり面の連続は良くない。堆積物も従来詳細な報告が行われていない。調査では、井波町付近などで高位段丘堆積物が確認された。ここでは、やや風化した円〜亜円礫から構成され、礫径は比較的大きい。

・中位段丘面堆積物

城端町細野付近や大谷島付近に分布が認められるが、堆積物は確認されず詳細については不明である。

・低位段丘T,U面堆積物

城端町蓑谷付近から城端市街地にかけて広く分布が認められる。堆積物は山際では巨礫優勢の砂礫層であるがマトリックスは比較的細粒でシルトの薄層が挟まれる場合もある。これに対して平野部では、礫径が小さくシルト・細粒砂が堆積している。

・低位段丘V面堆積物

段丘面は庄川町南部、井波町市街地南側に分布する。また赤祖父池周辺にも比較的連続よく分布している。堆積物は下部もしくは基底に巨礫を含む砂礫層が5m以上の厚さをもって堆積しており上部にはシルト・細礫・ローム質シルトや泥炭層など比較的細粒の堆積物が認められた。庄川町南部の製材所裏の法面では上位のシルト層中にDKP火山灰層が確認された。

・低位段丘W面堆積物

高清水断層の北西側に広く分布し一部では断層を横断して分布している。堆積物は山際では巨礫優勢の砂礫層であるがマトリックスは比較的細粒でシルトの薄層が挟まれる場合もある。これに対して平野部では、礫径が小さくシルト・細粒砂が堆積している。また、平野部に位置する蛇喰地区耕地整理箇所や宮後地区段丘崖崩壊箇所では堆積物中に白色〜灰白色のガラス質火山灰が確認された。この火山灰は分析の結果、姶良丹沢火山灰(AT)と同定され、この段丘面の段丘化の時期が最終氷期最盛期にあたるものと判断される。

・低位段丘X面堆積物

庄川の左岸に広く分布する。堆積物は巨礫を含む砂礫層となっている。

・低位段丘Y面堆積物

庄川左岸などに分布する。堆積物の詳細については明らかではない。

1)井波町市街地周辺地域

この地域では南東側の山地と平野部の境界付近および井波町市街地の西側から連代寺にかけての地域に段丘面の変位等から活断層が想定される。山地には岩稲累層と医王山火山岩層の境界となる断層が存在するが、これを横断する低位段丘には明瞭な段差等は認められないことから、更新世後期の断層活動はおおきなものではないと判断される。

平野部に見られる変位地形は低位段丘U,V,W面に認められるものであるが、この段丘面のうち、低位段丘V面には庄川町金屋地内製材所裏の法面において大山倉吉火山灰層(DKP)が確認され、この火山灰の予想年代からこの段丘面が最終氷期前半(4〜5万年前頃)に段丘化したものである可能性が考えられる。

このことから、この地域で求められる平均変位速度は低位段丘T面の高度差30mと段丘面の形成時期約4万年前から0.75m/千年程度とされる。また前縁部の断層崖の高度差約5mと、低位段丘W面の形成時期約2万年前から求められる平均変位速度は0.25m/千年となり、日本の活断層によって示させる基準から「活動度B」とすることができる。

2)井口村赤祖父川周辺地域

この地域では赤祖父池において未固結の砂礫層を切る断層面が確認され、この延長上において、竹村(1978)によって低位段丘の礫層を切る断層露頭の報告がなされている。今回赤祖父ため池右岸工事箇所で確認された断層面は未固結の砂礫層の基底を切っているが、より上位の砂礫層には断層面は連続せず、地層の変形のみが確認される。この上位に断層を横断して分布している低位段丘V面には明瞭な段差は見られないため、この断層の更新世後期における活動はあまり大きくないものと考えられる。

山地と平野の境界には比較的連続のよいリニアメントが観察されるが、これを横断する平坦面がほとんど分布していないために、断層の活動性については充分な資料は得られなかった。

3)城端町北野−蓑谷地域

この地域では南東側の山地に岩稲累層と医王山火山岩層の境界をなす断層破砕帯が確認された。しかし、この断層の延長と考えられる位置では低位段丘に明瞭な変位地形が確認されないことから、この断層の更新世後期における活動性はおおきなものではないと判断した。これに対して、城端町蓑谷付近では低位段丘に明瞭な段差の連続が観察される。ここではIw49,50地点において医王山火山岩層と考えられる凝灰角礫岩が地表付近で観察される。このことから、この地域において更新世における累積変位の大きい活断層は、蓑谷に見られた変位地形に連続し、山地と平野の境界から大きく北西側に離れて連続する可能性がある。