(1)法林寺断層

<地質各説>

・医王山火山岩層T,U

5万分の1地質図幅「城端」(井上ほか,1964)によれば、本層は主に流紋岩およびそれらの凝灰角礫岩からなるとされ、地域南部の医王山を中心とした地域に分布するとしている。調査範囲では流紋岩の角礫を含んだ凝灰角礫岩として確認された。また、5万分の1図幅には福光町香城寺から小二又にかけての地域に崖錐堆積物が分布するとされているが、これらの多くは流紋岩角礫を含む凝灰角礫岩であり、医王山層の一部と考えた。

・砂子坂凝灰岩互層

井上ほか(1964)によれば全体に凝灰質の中〜粗粒砂岩からなり、まれに凝灰質泥岩を伴うとされる。調査範囲では固結した砂岩が確認されたのみであり、詳細については不明である。

・土山凝灰岩層(上部,中部,下部)

井上ほか(1964)によれば本層は上部,中部,下部に分かれ、下部は凝灰質の軽石質粗粒砂岩を主体とし、流紋岩質凝灰角礫岩や凝灰質泥岩を挟む。中部は塊状の凝灰質泥岩からなるとされる。上部は粗粒砂岩を主体とし細粒凝灰岩をともない砂岩には軽石や細礫が含まれる。調査範囲では福光町坂本の西方や舘付近で確認されたが、上部は比較的細粒の砂やシルト層を多く挟み全体に泥質もしくは凝灰質泥岩と砂岩の互層となっている。

・御峯泥岩層

井上ほか(1964)によれば青灰色の塊状砂質泥岩からなり、まれに白色凝灰岩や石灰質ノジュールを含むとされる。調査範囲では福光町法林寺〜舘付近にかけて確認された。一部に貝化石や石灰質ノジュールが認められ、不明瞭なラミナを持つ砂・泥互層となっている部分もあるが全体には塊状の砂質泥岩となっている。

・蔵原砂岩層

井上ほか(1964)によれば、安山岩質の中〜粗粒砂岩からなり、上部は細粒となっているが全体には淘汰が悪く軽石粒を多量に含みクロスラミナが発達するとされる。調査範囲では福光町法林寺付近から桑山付近に分布し、細礫を伴う粗粒砂岩やシルト・細粒砂層を挟む粗粒砂岩が確認された。

・高窪泥岩層

井上ほか(1964)によれば、全体に砂質泥岩であり植物片・木片・細礫などを含む場合があるとされる。調査範囲では福光町岩木付近から福野町安居付近にかけて分布するが、細粒砂岩もしくはシルトと凝灰質砂岩の互層となっている場合がほとんどである。また、比較的粗粒な軽石粒を含む凝灰質砂岩となる部分もあり全体に粗粒となっている。

・氷見累層

井上ほか(1964)によれば最下部を除いておもに砂岩からなる。クロスラミナが発達し細礫を伴うことが多いとされる。調査範囲では福野町安居付近に分布し、軽石や細礫混じりの細粒〜粗粒砂岩である。

・高位砂礫層

井上ほか(1964)によれば主に砂礫からなり、粘土層もまれに挟まれるとされる。調査範囲では福野町興法寺の西側丘陵地に分布が確認された。円〜亜円礫を含む砂礫層または細礫混じり粗粒〜極粗粒砂となっている。

・低位段丘T,V面堆積物

この段丘面は北部の興法寺および南部の香城寺・広谷付近に分布するに過ぎないが、興法寺付近では細粒砂を挟む淘汰の良い礫層が確認された。

・低位段丘W面堆積物

段丘面は断層沿いの地域に断片的に分布するが、南部の香城寺付近では扇状地状に広がっており、比較的連続がよい。堆積物は比較的粒径の小さい礫で構成されるが堆積物全体の層相については未確認である。

・低位段丘X面堆積物

断層沿いに北部から南部まで連続よく分布している。堆積物はシルト・砂層を挟む砂礫層からなる。

・低位段丘Y面堆積物

調査範囲の北部に分布するが、堆積物の詳細については確認されていない。

1)福野町安居地域

この地域は法林寺断層が連続する最も北部にあたるが、段丘面の変位は明瞭で連続もよい。ここで活断層として認識される変位地形は西側の丘陵地と平地の境界よりも200〜300m程度東側に現れている。丘陵地と平地の境界付近では興法寺付近で段丘面の系統的な逆傾斜が観察され、低位段丘V面の堆積物が西に緩く傾斜していることが確認された以外は、氷見累層や高位砂礫層には急傾斜などの断層による累積変位を示す根拠が得られなかった。

これに対して、福光町岩木付近の丘陵地では、凝灰岩・細粒砂岩が40度を超える傾斜をもっていることが確認され、安居付近では1989年に行われた道路工事によって低位段丘の堆積物を切る逆断層が出現したことが確認されている。

これらのことから、この地域の活断層は更新世後期においては、変位地形の示す位置に到達し、その背後の段丘面を幅100〜200mにわたって変形させ、一部ではこの変形の解消としての断層面が地表に到達していることが考えられる。

2)福光町法林寺地域

この地域では、法林寺付近や川西付近で西側の丘陵地と平地の境界付近に、幅100〜50m程度の地層急傾斜帯が確認された。これらの急傾斜帯は西に向かって次第に緩やかな傾斜に移る。ここで段丘面の変位から予測される活断層の位置は、これらの急傾斜帯の東側とほぼ一致する。特に法林寺付近では、直立もしくは逆転西傾斜を示す蔵原砂岩層が同一レベルで段丘堆積物に直接接している可能性が高い。

井上ほか(1964)に示される法林寺断層は、御峯泥岩層・蔵原砂岩層・が示す急傾斜帯の西側に位置するが、この位置ではこれらの地層が大きく食い違う様な断層が確認されないこと、さらに更新世における累積変位を示す地質分布とはなっていないことなどから、活断層としての法林寺断層は明らかにこれらの地層が示す急傾斜帯の東側に位置するとすべきである。

この位置では、地層の急傾斜が確認されるばかりではなく、段丘面の変位も連続良く、段丘堆積物におも緩やかな傾斜が認められることから法林寺断層の活動的な部分は山地と低地の境界そのものとは対応せずやや東側に位置するとすべきである。